この記事では、医師が転職で提出する職務経歴書の書き方を解説します。採用担当者が確認する8つの記載項目、症例数・手技の表現方法、診療科別の自己PR例文を紹介します。書類選考で落とされやすいNG例もセットで確認できます。
医師が職務経歴書を書く前に知っておくべきこと
履歴書と職務経歴書の根本的な違い
医師の転職書類は「履歴書」と「職務経歴書」の2種類が基本です。それぞれの役割は明確に異なります。
| 書類 | 役割 | 主な記載内容 |
|---|---|---|
| 履歴書 | 経歴の記録・証明 | 学歴・職歴・資格・志望動機 |
| 職務経歴書 | 実力・実績の証明 | 症例数・手技・自己PR・研究業績 |
履歴書が「どんな経歴を持つ人か」を示す書類だとすれば、職務経歴書は「その医師が何をできるのか」を証明するための書類です。採用担当者が実際に採否を判断する根拠になるのは、ほとんどの場合において職務経歴書の内容です。
医師の転職経験が少ない理由のひとつとして、「就職活動で職務経歴書を作った経験がない」という背景があります。研修医マッチングでは職務経歴書の提出を求められることがほとんどなく、初めて転職を検討したタイミングで初めて作成するというケースが多くあります。
職務経歴書の提出が必要な場面
医療機関によって職務経歴書の扱いは異なります。大学病院や自治体病院では独自の業績書類(教育歴・研究業績一覧)を提出する形式が多い一方、民間病院・クリニック・一般企業(製薬・医療機器・医療IT)への転職では自作の職務経歴書が必要です。
- 転職エージェント経由の場合: ほぼ必須。担当者が書類添削を行うため、まず自分で作成して提出する
- 民間病院・クリニックへの直接応募: 求人票に「職務経歴書を添付すること」と明記されているケースが多い
- 一般企業(製薬・医療機器・医療IT): 履歴書と職務経歴書の両方が標準的に求められる
転職を決意したタイミングで職務経歴書を準備しておくと、急な求人応募にも対応できます。研修医の転職書類作成については、研修医の履歴書・職務経歴書の書き方も参考にしてください。

医師の職務経歴書に書く8つの項目
医師の職務経歴書は、一般的なビジネス職のものとは記載する内容が異なります。以下の8つの項目を漏れなく記載することで、採用担当者が候補者の実力を正確に把握できます。
①職務要約(最重要項目)
職務要約とは、自分のキャリア全体を200〜300文字で凝縮した「冒頭の自己紹介文」です。採用担当者が職務経歴書の中で最初に読む場所であり、30秒で候補者を次の選考に進めるかを判断するための材料になります。
専門科目・勤務歴・特筆すべき実績を3〜5文でまとめます。詳細な説明は後続の項目に任せ、「この医師は何者で何ができるのか」が一目で伝わる内容にしてください。
②職務経歴(勤務先・診療科・在籍期間)
勤務した医療機関ごとに時系列で記載します。記載すべき項目は以下のとおりです。
- 医療機関名(正式名称)・所在地
- 病院区分(大学病院・市中病院・クリニック等)と病床数
- 在籍期間(年月〜年月)
- 所属診療科・担当した役職(研修医・後期研修医・医員・助教等)
病床数を記載するのは、医療機関の規模を採用担当者がすぐに把握できるようにするためです。同じ「総合病院」でも50床と500床では規模が全く異なり、省略すると実力の判断が難しくなります。
③担当症例・疾患と症例数
医師の職務経歴書で最も差が出るのがこの項目です。「内科外来を担当していました」だけでは採用担当者に実力が伝わりません。具体的な数字を使って経験値を示すことが必須です。症例数の書き方については後述の「診療科別の書き方」で詳しく解説します。
④可能手技・処置
経験した手技・処置を一覧で記載します。外科系は術式と件数、内科系は検査手技や処置の種類を列挙してください。
- 外科系の例: 腹腔鏡下胆嚢摘出術(術者として年間120件)、開腹虫垂切除術(術者として年間40件)
- 内科系の例: 上部消化管内視鏡検査(年間500件)、腹部エコー(年間300件)、腰椎穿刺、骨髄穿刺
⑤免許・資格
医師免許の取得年・医籍番号を記載します。医籍番号の記載を求める医療機関も多いため、あらかじめ確認しておいてください。英語での医療業務がある場合は英語運用能力(TOEIC・英検等)も記載します。
⑥所属学会・専門医・認定医
現在所属している学会と、取得済みの専門医・認定医資格を記載します。専門医の正式名称と取得年は採用担当者が必ず確認するため、略称ではなく正式名称を使用してください。
例:「日本内科学会認定内科医(○年取得)」「日本消化器病学会専門医(○年取得)」
⑦研究・論文・業績
大学病院や研究機関への転職を検討している場合は特に重要な項目です。筆頭著者・共著を区別して記載します。学会発表を含める場合は、発表年・学会名・演題タイトルを明記してください。一般病院への転職では筆頭著者論文のみを厳選して記載する形で問題ありません。
⑧アピールポイント(自己PR)
自己PR欄は採用担当者の印象を大きく左右します。詳細な書き方については後述の「自己PRで差をつける書き方」で解説します。
採用担当者が最初に読む「職務要約」の書き方
職務要約は採用担当者が最初に目を通す場所です。A4用紙2〜3枚の書類を最初から丁寧に読む時間はなく、ここで「次の選考に進めるか」の大まかな判断が決まります。
採用担当者はここを見ている
- 専門診療科が応募先の求める科と一致しているか
- 現在のキャリアステージ(研修終了直後/後期研修中/専門医取得済み)
- 特筆すべき実績・強みが1文で伝わるか
- 応募先医療機関の方針(地域医療・急性期・専門性)に合致しているか
職務要約の良い例・NG例
職務要約はわずか3〜5文ですが、書き方で選考通過率が大きく変わります。良い例とNG例を比べて確認してください。
NG例:情報が漠然としていて実力が伝わらない
「大学病院と市中病院で消化器内科を担当してきました。患者さんへの丁寧な対応を心がけており、チームでの協力を大切にしています。今後は地域に貢献できる医療に携わりたいと考えています。」
→ 症例数・手技・実績が一切なく、どの医師にでも当てはまる内容。採用担当者が「この人の経験値」を把握できない。
良い例:数字と専門性が30秒で伝わる
「消化器内科専門医(○年取得)として、市中病院での後期研修(3年)と専門病院での勤務(4年)を経て、上部・下部消化管内視鏡を年間合計800件以上担当してきました。炎症性腸疾患の診療に注力しており、難治性クローン病の生物学的製剤導入例を多く経験しています。貴院の地域消化器医療の強化に貢献できると考え、応募いたします。」
→ 専門医取得・症例数・特化分野・応募先への貢献が3文に凝縮されている。
職務要約を書いた後は、「消化器内科をまったく知らない事務担当者が読んでも、この人が何をできるかが分かるか」という視点で読み直してください。専門用語だけで説明された文章は、書類を最初に確認する事務担当者には伝わりません。
症例数・手技の書き方(診療科別)
「症例数を具体的に書く」と言われても、どう表現すれば正確かつ印象的に伝わるか悩む医師は多くいます。診療科別に代表的な書き方を示します。
内科系医師の書き方
内科系は外来患者数・入院担当数・検査手技件数を中心に記載します。診療科によって強調すべきポイントが異なります。
| 診療科 | 記載すべき実績・数値の例 |
|---|---|
| 消化器内科 | 上部内視鏡(年間○件)、下部内視鏡(年間○件)、ESD・EMR件数 |
| 循環器内科 | 心臓カテーテル検査(術者として年間○件)、心エコー(年間○件) |
| 呼吸器内科 | 気管支鏡検査(年間○件)、担当入院患者数(常時○〜○人) |
| 内分泌・糖尿病科 | 外来患者数(1日○人)、インスリン導入・教育入院の担当数 |
| 総合内科・一般内科 | 外来患者数(1日○〜○人)、担当入院患者数、主要疾患名 |
良い例文(消化器内科医)
「消化器内科:外来(1日20〜25人)および入院診療(常時10〜15人)を担当。上部消化管内視鏡(年間350件)・下部消化管内視鏡(年間200件)を施行。ESD経験15件(胃・食道)。担当疾患は消化性潰瘍・炎症性腸疾患・消化管腫瘍が中心。」
外科系医師の書き方
外科系は術式別の年間件数が最重要です。「術者(執刀医)」「指導医の下での助手」「第二助手」を区別して記載することで、実際のスキルレベルが明確になります。
良い例文(消化器外科医)
「担当手術(術者として):腹腔鏡下胆嚢摘出術(年間100件)、腹腔鏡下虫垂切除術(年間40件)、腹腔鏡補助下結腸切除術(年間35件)、胃全摘術(年間15件)。ほか助手・第二助手として膵頭十二指腸切除術(20件)・肝切除(10件)を経験。」
件数が明記された上で「術者として」か「助手として」かが区別されている状態が、採用担当者にとって最も判断しやすい書き方です。「助手経験のみ」でも正直に記載した方が、後から実態と乖離して信頼を失うよりも評価されます。
症例数が少ない場合(研修直後・転科直後)
研修終了直後や専攻科を変更した直後は症例数が少ないことが気になる場合があります。その場合は「数字より役割と学習の深さ」を示す方向に切り替えてください。
- 症例数は少なくても、難易度の高い症例・稀な疾患の担当経験があれば記載する
- 指導医の下でどんな役割を担ったか(主担当・カルテ記載・指示出し・チームリーダー等)を具体的に書く
- 学会発表・症例報告など学術活動で、症例数の少なさをカバーする
職務経歴書の作成で行き詰まった場合は、転職エージェントのキャリアアドバイザーへの相談が有効です。書類の内容を整理した上で応募先に合わせた見せ方のアドバイスを受けられます。作成した書類をプロに添削してもらいたい場合は、有料添削サービスの選び方も確認してください。

自己PRで他の候補者と差をつける書き方
経験してきた診療と実績を職務経歴に書いた後、自己PR欄をどう書くかで悩む医師が多くいます。採用担当者が選考で最も重視するのは職務経歴の数字ですが、同程度の実績を持つ候補者が複数いる場合に差をつけるのが自己PRです。
採用担当者が「思わず通過させたくなる」自己PRの条件
採用担当者はここを見ている
- 応募先への貢献が具体的か:「貴院でどう活躍できるか」が明示されているか
- エピソードがあるか: 抽象的な強みより「こういう場面で、こう動いた」という具体的な事実
- 使い回しでないか: どの医療機関にも送れる内容は評価が低い
- 待遇への言及がないか: 年収・勤務条件への言及は自己PR欄に書かない
自己PRは「結論(強み)→根拠(エピソード・数字)→応募先への貢献」という順序で組み立てると、読み手に伝わりやすくなります。「患者さんに寄り添って〜」「チーム医療を大切に〜」のような汎用フレーズは、毎日大量の書類を読む採用担当者には見透かされています。
診療科別・状況別の自己PR例文
自己PRは応募先の医療機関の特性に合わせて書き直すことが前提です。以下は参考例です。数字・エピソードを自分の状況に合わせて置き換えてください。
内科系(地域中核病院への転職を想定)
「消化器内科専門医として7年間、急性期市中病院で内視鏡検査・治療を中心に診療してきました。外来(1日25〜30人)と病棟業務を並行しながら、地域の一次医療機関と連携した紹介・逆紹介の運用改善にも取り組んだ経験があります。貴院が注力する在宅復帰支援においても、多職種と連携した退院調整の経験を活かせると考えています。」
外科系(専門病院への転職を想定)
「消化器外科専門医として腹腔鏡手術を年間180件(術者として)担当してきました。大腸がん・胃がんの腹腔鏡手術を中心に経験を積み、ロボット支援手術の助手経験も有しています。貴院が積極的に推進されているロボット支援手術において早期に術者資格の取得を目指すとともに、若手外科医の指導にも貢献したいと考えています。」
専門医取得後(機能強化を担うポジションを想定)
「循環器内科専門医・心臓リハビリテーション指導士として、心不全の急性期管理から外来フォロー・リハビリ指導まで一貫して担当してきました。前職では多職種連携チームの立ち上げに携わり、心不全患者の再入院率を前年比15%改善しました。貴院の慢性心不全管理体制の強化に即戦力として貢献できると考えています。」
医療法人の採用担当者が志望動機欄で重視するポイントは、医療法人の志望動機の書き方でも詳しく解説しています。

書類選考で落とされる職務経歴書のNG例
採用担当者が見てきた医師の職務経歴書には、繰り返し同じNG例が登場します。以下の5パターンに自分の書類が該当していないか確認してください。
NG①:症例数・手技件数がどこにも書かれていない
「○○病院 内科 担当」とだけ書かれた職務経歴書は、採用担当者に実力が伝わりません。病院に在籍していた事実は分かっても「何をどれだけできるか」が不明なため、次の選考に進める根拠がない状態になります。外来患者数・検査件数・手術件数を必ず数値で記載してください。
NG②:どの病院にも使えるコピペの自己PR
「患者さんに寄り添った診療を心がけています」「チーム医療を大切にしています」という文章は、ほぼすべての医師が書きます。採用担当者はこの種の自己PRを毎日大量に読んでいます。応募先の医療機関の特性(診療科の方針・地域医療への取り組み・学術活動の有無)に合わせた内容でなければ、次の選考に進む理由になりません。
NG③:専門医・認定医の記載が略称になっている
「消化器専門医取得済み」という書き方では、資格の正式名称・取得年・登録状況が不明です。採用担当者や資格認定機関が確認できる形で正式名称と取得年を記載してください。例:「日本消化器病学会消化器病専門医(○○年取得)」。
NG④:希望年収・勤務条件が本文に書かれている
職務経歴書は「自分の実力を証明する書類」です。希望年収や勤務条件は別途希望条件欄または転職エージェントへの申告で伝えてください。職務経歴書に記載すると「待遇面を優先して応募している」という印象を与えることがあります。
NG⑤:書式が崩れていてレイアウトが読みにくい
Wordで作成した職務経歴書をPDF変換した際にレイアウトが崩れていたり、フォントが混在していたりするケースがあります。採用担当者は書類のフォーマットの乱れを「細部への配慮が欠けている」と受け取ることがあります。送付前にPDFで最終確認し、余白・フォント・行間が整っているかチェックしてください。
書類作成の手間を減らしたい場合、職務経歴書の自動作成ツールを活用する方法もあります。ただし、ツールが生成した文章はそのまま使用せず、症例数・応募先への貢献など医師特有の情報は必ず自分で加筆することが前提です。職務経歴書自動作成ツールの選び方も参考にしてください。

まとめ
- 医師の職務経歴書は「実力の証明書類」であり、症例数・手技件数を必ず数値で記載することが基本
- 採用担当者が最初に読む職務要約に注力する。専門科・経験年数・特筆すべき実績を3〜5文でまとめる
- 自己PRは応募先の医療機関ごとに書き直す。どの病院にも使える汎用的な内容は評価されない
- 専門医・認定医は略称を避け、正式名称と取得年を記載する
- 提出前にPDFで確認し、書式の崩れ・誤字・数値の誤りがないかチェックする
職務経歴書の作成に不安がある場合は、転職エージェントのキャリアアドバイザーへの相談や、プロによる添削サービスの活用も検討してください。書類の質が、面接に進める案件数を直接左右します。
医師の職務経歴書に関するよくある質問
- 医師の職務経歴書はA4何枚が適切ですか?
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A4用紙2〜3枚が一般的な目安です。研修終了直後など経験が浅い場合は1〜2枚でも問題ありませんが、情報を詰め込みすぎてレイアウトが崩れるよりも、2枚に整理して読みやすい状態にする方が評価されます。大学病院・研究機関への応募で研究業績が多い場合は3〜4枚になることもあります。
- 職務経歴書に書く症例数がわからない場合はどうすればいいですか?
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勤務していた医療機関の電子カルテや統計資料を参照するか、当時の上司・先輩医師に確認してください。正確な数字が把握できない場合は「○〜○件程度」「週あたり○〜○件」のように範囲で記載しても問題ありません。「不明なので記載なし」とするよりも、概算でも数字を示す方が採用担当者にとって判断しやすくなります。
- 転科・専攻変更がある場合、職務経歴書にどう書けばいいですか?
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転科・専攻変更の経歴は隠さず記載してください。採用担当者は経歴の流れを確認するため、転科の事実が後から判明すると信頼性が下がります。「○○科での経験を基盤に△△科へキャリアチェンジした理由」を職務要約や自己PRの中で一文添えると、採用担当者が経歴の流れを理解しやすくなります。
- 医師の職務経歴書はWordとExcelどちらで作るべきですか?
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Wordが最も一般的です。WordでA4レイアウトを整えてからPDF形式に変換して提出するのが標準的な方法です。Excelで作成することも可能ですが、レイアウトの自由度が低く印刷時に崩れやすいためWordを推奨します。転職エージェントによってはWordのテンプレートを提供しているため、初めて作成する場合はそちらを活用するのもひとつの方法です。

