会社を辞めて個人事業主や業務委託で働いた経験は、履歴書の職歴欄でつまずきやすい部分です。会社員のように「入社・退職」が使えず、開業届を出したかどうかで書き方も変わります。この記事では、独立の経歴をケース別の例文で示しながら、採用担当者が独立経験者のどこを見ているか、フリー期間を空白扱いされない書き方までまとめます。
個人事業主・業務委託の経歴は履歴書にどう書く?まず押さえる基本ルール
個人事業主や業務委託の経歴を書くとき、会社員の職歴欄の感覚をそのまま持ち込むと不正確になります。理由はシンプルで、業務委託は企業に「雇われる」関係ではなく、企業と対等な立場で結ぶ契約だからです。まずは会社員の書き方との違いを2点だけ整理します。
「入社・退職」は使わない|正しい言い換え
業務委託や個人事業主の期間に「入社」「退職」と書くのは誤りです。入社・退職は雇用契約を前提とした言葉のため、契約関係を正しく理解していないと受け取られます。開始・終了・継続は、それぞれ契約の性質に合った表現に置き換えます。
| 場面 | 会社員の表記 | 個人事業主・業務委託の表記 |
|---|---|---|
| 働き始め | ◯◯株式会社 入社 | 個人事業主として開業 / ◯◯株式会社と業務委託契約を締結 |
| 区切り・終了 | 一身上の都合により退職 | 契約期間満了により終了 / 一身上の都合により廃業 |
| 現在も継続中 | 現在に至る | 現在に至る |
| 雇用形態欄 | 正社員・契約社員 | 業務委託(個人事業主)・フリーランス |
「現在に至る」だけは会社員と同じ表現で問題ありません。契約を今も続けている場合や、独立したまま応募する場合に使います。
雇用形態は「業務委託(個人事業主)」と明記する
職歴欄に会社名だけを並べると、そこが正社員なのか業務委託なのか採用担当者には判別できません。誤解を避けるため、その期間が雇用ではないことを一目で分かる形で示します。「業務委託(個人事業主)」または「フリーランス(業務委託契約)」と添えるのが基本です。
採用担当者はここを見ている
- その期間が「雇用」か「契約」かを最初に判別している(社会保険や指揮命令の有無に関わるため)
- 「入社・退職」を業務委託に使っていると、契約の理解が浅い人だと感じる
- 雇用形態が曖昧だと、経歴詐称を疑う前に「確認の手間」で印象が下がる
【ケース別】個人事業主・業務委託の職歴欄の書き方と例文
独立の形は人によって違います。開業届を出したか、特定企業と契約したか、副業だったかで、正しい書き方が変わります。自分に近いケースの例文をそのまま流用できるよう、5パターンに分けて示します。年月は和暦・西暦どちらでも構いませんが、履歴書全体で表記を統一してください。
開業届を提出している場合(屋号あり・なし)
税務署に開業届を出している場合は、正式に「開業」と書けます。屋号を登録していれば括弧で添えると、事業として活動していた実態が伝わります。屋号がなければ屋号の記載は不要です。
良い例文
令和2年4月 個人事業主として開業(屋号:〇〇デザイン)
令和6年3月 一身上の都合により廃業
令和6年4月 現在に至る
屋号がない場合は「個人事業主として開業」とだけ記載します。事業を続けたまま応募するなら、廃業の行は書かず「現在に至る」で締めます。
開業届を提出していない場合
開業届を出さずにフリーランスとして働いていた期間は、「開業」「廃業」という言葉を使いません。行政手続き上の開業をしていないためです。代わりに「活動を開始」「活動を終了」と書けば、事実に沿った正確な表現になります。
良い例文
令和3年1月 フリーランスのWebライターとして活動を開始
令和5年12月 活動を終了
令和6年1月 現在に至る
NG例
令和3年1月 個人事業主として開業
(開業届を出していないのに「開業」と書くと、面接で開業届の話になったときに説明が食い違い、かえって信頼を損ないます。)
特定企業と業務委託契約を結んで働いた場合
常駐型やプロジェクト単位で、特定の企業と業務委託契約を結んで働いていたケースです。この場合は「入社」ではなく「契約を締結」、終了時は「契約期間満了により終了」と書きます。従事した業務を一言添えると、採用担当者が仕事内容をイメージしやすくなります。
良い例文
令和4年6月 株式会社〇〇と業務委託契約を締結し、ECサイトの運用業務に従事
令和6年5月 契約期間満了により終了
複数社と並行して契約していた場合は、主要な取引先を2〜3社に絞って記載し、詳細は職務経歴書に回すと職歴欄が読みやすくなります。
会社員から独立し、再び就職する場合
もっとも相談が多いのが、会社員→独立→再就職の流れです。時系列で「退職→開業→廃業」を素直に並べれば問題ありません。ごまかそうとして順序を崩すより、事実を一本の線でつなぐほうが信頼されます。
良い例文
平成30年4月 株式会社△△ 入社
令和2年3月 一身上の都合により退職
令和2年4月 個人事業主として開業(屋号:△△工房)
令和6年3月 一身上の都合により廃業
令和6年4月 現在に至る
会社員時代は「入社・退職」、独立期間は「開業・廃業」と、雇用形態ごとに言葉を切り替えている点がポイントです。1枚の履歴書の中で両方の表記が混在しても、それぞれが正しければ問題ありません。
副業・ダブルワークで業務委託していた場合
会社員をしながら副業として業務委託を受けていた期間は、書くかどうかを応募先の副業可否で判断します。本業に支障がなかったことや、そこで培ったスキルが応募先で活きる場合は、むしろ強みとして記載する価値があります。
副業を並行していた期間の職歴欄の整理は、履歴書のダブルワークの書き方で職歴欄・本人希望欄の記入例をあわせて確認できます。

フリー期間を「空白」に見せない書き方
独立経験者がもっとも警戒すべきなのが、フリーランス期間を「無職の空白」と受け取られることです。書き方を一手間加えるだけで、空白どころか働き続けていた実績として伝わります。
- 期間に切れ目を作らない:退職の翌月から開業を始める形で、月単位で空きが出ないよう並べる
- 「活動を開始」を必ず書く:開業届がなくても活動開始を記すことで、その期間が空白でないと示せる
- ブランクの理由は正直に添える:療養や育児で本当に働いていなかった期間は隠さず、「病気療養のため」など一言添える
本当に働いていない期間があった場合の職歴欄の埋め方や自己PRへの回し方は、履歴書の無職期間の書き方で状況別の例文を紹介しています。

採用担当者が独立経験者の履歴書で見ている4つのポイント
独立経験者の書類には、会社員の応募者にはない特有のチェックが入ります。採用担当者は「スキルがあるか」よりも先に、次の4点を確認しています。ここに先回りして答えを用意しておくと、書類選考から面接までの通過率が変わります。
| 採用担当者の懸念 | 先回りして示すこと |
|---|---|
| なぜ会社を辞めて独立したのか | 挑戦や専門性の追求など、前向きな独立理由 |
| なぜ今また就職するのか | 安定より腰を据えて取り組みたい目的(後ろ向きに聞こえない再就職理由) |
| 組織になじめるか | 独立中もチームや取引先と協働した実績 |
| 指示に従って動けるか | クライアントの要件に沿って納品してきた事実 |
とくに「なぜまた雇われる側に戻るのか」は、独立経験者だからこそ必ず問われます。「事業がうまくいかなかったから」という説明はできるだけ避け、応募先でやりたいことに結びつけて語るのが得策です。履歴書の志望動機欄と職務経歴書で一貫させておきましょう。
再就職理由の言い換え例
- NG:「収入が不安定で生活が厳しくなったため」
- OK:「個人で受注する中で、より大きな規模の案件にチームで長期的に取り組みたいと考えるようになったため」
履歴書だけでは伝わらない|職務経歴書での補い方
個人事業主・業務委託の経歴は、履歴書の職歴欄だけでは実力が伝わりきりません。職歴欄は「いつ・何をしていたか」を示す最小限の記録で、仕事の中身や成果を書くスペースがないためです。業務委託経験者ほど、履歴書とセットで職務経歴書を用意する必要があります。
- 案件ごとに具体的に書く:どんなクライアントの、どんな課題を、どう解決したかをプロジェクト単位でまとめる
- 成果を数字で示す:「売上を前年比130%」「問い合わせ数を月40件増」など、雇われていなくても出せる実績を数値化する
- 会社員時代と独立後を同じ粒度で書く:どちらも詳しく書くことで、経歴の連続性が伝わる
ゼロから作るのが大変な場合は、質問に答える形で下書きができる職務経歴書の自動作成ツールから始めると効率的です。

採用担当者はここを見ている
- 「自分で仕事を取ってきた」営業力・課題解決力は、会社員経験者にはない評価ポイントになる
- 実績が数字で書かれているかどうかで、実力の裏付けを判断している
個人事業主・業務委託の履歴書を書くときの注意点
最後に、書き方の正確さとは別に、独立経験者が見落としがちな実務上の注意点を挙げます。細部ですが、守られていないと減点対象になります。
- 守秘義務を守る:契約で開示が禁じられているクライアント名や案件内容は書かない。伏せる場合は「大手食品メーカー」のように業種・規模で表現する
- 年月表記を統一する:和暦と西暦を混ぜない。会社員期間と独立期間で表記がバラつかないよう最後に見直す
- 職歴欄が埋まらなくても詰め込みすぎない:全案件を書くと読みにくくなる。主要な取引先に絞り、残りは職務経歴書へ
- 様式は市販・厚生労働省様式でよい:フリーランス専用の履歴書は不要。使い慣れた様式で問題ない
どの様式を使うか迷う場合は、無料の履歴書テンプレートから職歴欄が書きやすいものを選ぶとよいでしょう。

まとめ
- 業務委託・個人事業主の期間に「入社・退職」は使わず、「開業・廃業」「契約を締結・契約期間満了により終了」に置き換える
- 開業届の有無で「開業」か「活動を開始」かが変わる。雇用形態欄には「業務委託(個人事業主)」と明記する
- フリー期間は空白に見せず、独立理由・再就職理由を前向きに用意しておくと採用担当者の懸念を消せる
- 仕事の中身と成果は履歴書では伝わらないため、職務経歴書とセットで用意する
独立の経歴は、書き方さえ正確なら不利にはなりません。事実を正しい言葉で並べ、成果を数字で補えば、会社員経験者にはない強みとして評価されます。
個人事業主・業務委託の履歴書に関するよくある質問
- 業務委託で働くだけなら履歴書は必要ないですか?
-
業務委託契約を結ぶだけなら履歴書を求められないこともあります。ただし、企業への就職・転職や、常駐型・長期の業務委託では履歴書と職務経歴書の両方を求められるのが一般的です。求められてから慌てないよう、あらかじめ用意しておくと安心です。
- 開業届を出していない場合、職歴欄には何と書けばいいですか?
-
「開業」「廃業」は使わず、「フリーランスの〇〇として活動を開始」「活動を終了」と書きます。開業届は税務上の手続きなので、出していない期間に「開業」と書くと事実と食い違い、面接で説明に困ることがあります。
- クライアント名は履歴書に書いてもいいですか?
-
契約で守秘義務が定められている場合は書けません。開示が問題ない取引先のみ記載し、伏せる必要があるものは「大手〇〇メーカー」のように業種と規模で表現します。守秘義務違反は、それ自体が採用担当者にマイナスの印象を与えます。
- 独立に失敗して再就職する場合、そのまま書くと不利ですか?
-
経歴は事実どおり書いて構いません。不利になるのは経歴そのものより、再就職理由の伝え方です。「うまくいかなかったから」ではなく、応募先でやりたいことに結びつけて説明すれば、独立で得たスキルを前向きに評価してもらえます。


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