この記事では、履歴書の電子化・保管方法を解説します。採用者と不採用者で異なる保管義務の違い、スキャナーやスマホアプリを使ったPDF変換の手順、クラウドストレージでの安全な管理方法、そして個人情報保護法に沿った廃棄まで、実務で使えるポイントをまとめています。
履歴書の保管に関する法的義務を確認する
採用担当者として受け取った履歴書は、個人情報保護法の対象となる重要書類です。保管義務に関しては「採用した人の書類か」「不採用の人の書類か」によってルールが大きく異なります。まずここを正確に把握することが、適切な電子化・保管の前提になります。
採用者の履歴書は退職後5年(当面3年)の保管義務がある
採用した従業員の履歴書は、労働基準法第109条により「退職または死亡の日から5年間」の保存が義務付けられています。ただし2020年の法改正では経過措置として「当面の間は3年間」でも可とされており、現時点では3年以上保管していれば違法にはなりません。
将来的に5年保管に移行することを踏まえると、今から5年を基準に管理体制を整えておくほうが現実的です。電子化で保管スペースのコストが下がることも考えると、5年基準での保管は難しくありません。
採用担当者はここを見ている
- 保管する書類の対象範囲:履歴書・職務経歴書・入社時の誓約書など採用関連書類はすべて対象
- 起算日の確認:保管期間は「入社日」ではなく「退職または死亡の日」から数える
- 将来の5年移行への備え:早めに5年基準で管理ルールを統一しておくと後で楽
不採用者の履歴書に法的義務はないが速やかな廃棄が原則
不採用となった応募者の履歴書には、労働基準法上の保管義務はありません。労働関係が成立していないためです。ただし、個人情報保護法の観点から、不採用が確定したら速やかに廃棄または返却することが原則です。
実務的には、採用選考中にトラブルが発生した場合の証拠保全を目的として「6ヶ月〜1年程度」保管する企業も多い状況です。保管する場合でも、保管期間と廃棄方法を社内ルールとして明文化しておくことが重要です。
NG例
「不採用者の書類を何となく引き出しに入れたまま数年放置する」——これは個人情報保護法違反になるリスクがあります。不採用書類は廃棄または返却のルールを決め、廃棄日を記録することが必須です。
紙の履歴書を電子化する3つの方法
紙で受け取った履歴書を電子化するには主に3つの方法があります。それぞれに向いている状況が異なるため、自社の環境や応募者数に合わせて選んでください。
①スキャナー・複合機でPDF化する
最も確実な電子化方法が、スキャナーや複合機(コピー機)を使ったPDF変換です。解像度300dpi以上でスキャンすれば、文字のつぶれも少なく、採用管理システムへの登録にも使いやすいファイルに仕上がります。
- 推奨設定:解像度300dpi以上、カラーまたはグレースケール、PDF形式で保存
- OCR機能付きスキャナーの活用:テキストを認識してくれるため、氏名や住所などでキーワード検索できるようになる
- ファイルサイズの目安:A4用紙1枚あたり100〜300KB程度。応募者数が多い場合は圧縮も検討
②スマホアプリで手軽に電子化する
スキャナーがない環境では、スマホのカメラを使ったスキャンアプリが活用できます。Adobe Scan・Microsoft Lens・CamScannerなどのアプリは、撮影した画像を自動補正してPDFに変換してくれます。
手軽さが最大のメリットですが、撮影した履歴書画像がスマホのカメラロールに残る点には注意が必要です。個人情報を含む画像が端末に保存されるため、撮影後は速やかにカメラロールから削除するか、個人端末ではなく会社支給端末を使用してください。
スマホで作成した電子履歴書を送付・管理する方法は、履歴書スマホ作成おすすめ7選の記事でも詳しく解説しています。

③最初から電子履歴書・Web履歴書として受け取る
そもそも紙での提出を求めない方法も有効です。Web応募フォームや電子履歴書ツールを活用すれば、最初からPDFやデータ形式で受け取れるため、スキャンの手間そのものがなくなります。
- 求職者側のメリット:何度でも内容を更新でき、複数社への応募も効率化できる
- 採用担当者側のメリット:電子化の工程が不要、受け取った瞬間から管理システムに登録できる
- 選択肢:会社独自の応募フォーム、採用管理システムの応募受付機能、Web履歴書サービスの活用
Web上で作成・提出できる履歴書ツールについては、web履歴書おすすめ9選の記事や履歴書作成ツールおすすめ7選の記事で比較しています。

電子化した履歴書を安全に保管する方法
電子化が完了したあとの「保管方法」も重要です。単にパソコンのフォルダに入れるだけでは、セキュリティリスクや検索効率の低下が起きます。以下3つの観点から整理します。
クラウドストレージで管理する(Google Drive・OneDriveなど)
個人のパソコンに保存する方法は、端末の故障・紛失でデータを失うリスクがあります。クラウドストレージを活用すればデータが自動バックアップされ、担当者が変わっても引継ぎがスムーズです。
フォルダ構成は、あとから検索しやすいよう最初にルールを決めておくことが重要です。以下のような構成が実務でよく使われます。
推奨フォルダ構成例
- 採用書類 > 2025年度 > 採用者 > 氏名(ファイル名:YYYYMMDD_氏名_応募職種)
- 採用書類 > 2025年度 > 不採用者 > 氏名(廃棄予定日を別途記録)
クラウドストレージで最も注意が必要なのが「共有設定」です。うっかり「リンクを知っている全員が閲覧可能」に設定してしまうと、個人情報が外部に漏れる重大な事故になります。アクセス権限は採用担当者と承認済みの役職者のみに限定してください。
オンラインで履歴書を管理・提出できるサービスを比較した情報は、オンライン履歴書おすすめ7選の記事も参考になります。

採用管理システムで一元管理する(企業向け)
採用件数が多い企業には、ATS(採用管理システム)の導入が効果的です。候補者ごとに履歴書・職務経歴書・選考メモ・面接評価をひとつにまとめて管理でき、担当者間での情報共有もスムーズになります。
- 保管期限アラート:設定した廃棄期限が近づくと通知してくれるシステムもあり、廃棄漏れを防げる
- 権限管理:採用担当者・面接官・役員など役割別にアクセス権を設定できる
- 検索機能:氏名・職種・応募日・選考ステータスで絞り込みができ、過去の候補者を即座に参照できる
ファイル名のルールとアクセス権限の設定
採用管理システムを使わない場合も、ファイル名の命名規則を社内で統一するだけで検索効率が大きく上がります。
| 項目 | 推奨ルール | NG例 |
|---|---|---|
| ファイル名 | YYYYMMDD_氏名_応募職種(例:20250415_山田太郎_営業) | 履歴書.pdf / scan001.pdf |
| アクセス権限 | 採用担当者・承認済み上長のみ閲覧可能 | 全社員が閲覧可能な共有フォルダに保存 |
| パスワード設定 | 重要書類にはPDFパスワードを設定する | パスワードなしでクラウドに保存 |
| 廃棄管理 | 廃棄予定日・廃棄担当者を記録するExcelを別途管理 | 廃棄記録なし |
電子化保管のメリット|紙保管との比較
「電子化しても手間が増えるだけでは?」と感じる担当者も多いですが、一度仕組みを整えれば紙保管より運用コストが大幅に下がります。
| 比較項目 | 紙保管 | 電子化保管 |
|---|---|---|
| 保管スペース | キャビネット・書棚が必要 | ほぼ不要 |
| 検索性 | 手作業で目視確認が必要 | キーワード検索で即座に参照可能 |
| テレワーク対応 | 現場に行かないとアクセス不可 | どこからでもアクセス可能 |
| セキュリティ | 鍵付きキャビネットが必要 | アクセス権限・暗号化で対応 |
| 廃棄 | シュレッダーや溶解処理が必要 | データ削除ソフトや完全削除コマンドで対応 |
| 複数人での共有 | コピーを取らない限り一人しか見られない | 権限設定内で同時アクセス可能 |
特にテレワーク・在宅勤務が混在する採用現場では、電子化によってリモートでの選考対応がスムーズになる効果が大きいです。応募者への選考結果通知のスピードも上がり、候補者体験の向上にも直結します。
履歴書の廃棄方法と注意点
電子化・保管と同じくらい重要なのが「廃棄」の管理です。「削除した」「シュレッダーにかけた」で終わりにしている企業も多いですが、実は廃棄方法と記録管理にも落とし穴があります。
紙の履歴書を安全に廃棄する方法
紙の履歴書を廃棄する際は、単に捨てるだけでは個人情報の漏えいリスクが残ります。以下の方法を状況に応じて使い分けてください。
- シュレッダー処理:クロスカット(細断)タイプのP-4規格以上推奨。縦のみの細断では復元される可能性があります
- 溶解処理委託:大量の書類がある場合は廃棄業者への溶解処理委託が確実。処理証明書を受け取り保管する
- 廃棄記録の保存:廃棄した日時・廃棄方法・担当者名を記録に残す(個人情報保護法対応の証拠)
採用担当者はここを見ている
- 廃棄業者に委託した場合は「委託契約書」と「処理証明書」を両方保管しているか
- 社内シュレッダーを使う場合、処理後のゴミをまとめて捨てていないか(個人情報の再構成が可能になるリスク)
- 廃棄記録に「誰が・いつ・どの書類を・どのように廃棄したか」が明記されているか
電子データを完全削除する手順
電子データの「削除」には注意が必要です。通常のファイル削除やゴミ箱の空にする操作では、データは物理的にストレージに残っており、専用のソフトウェアで復元できてしまいます。
- 通常フォルダ保存の場合:データ消去ソフト(Eraser・FileShredder等)を使用し、上書き削除を実行する
- クラウドストレージの場合:「ゴミ箱を空にする」だけでなく、「バックアップデータの完全削除」オプションを確認する。Google Driveは30日後に自動消去されるが、即時削除したい場合は明示的に操作が必要
- 採用管理システムの場合:システム内の「候補者削除」機能を使用。バックアップからの復元ができないか、ベンダーに確認する
電子データの廃棄も、紙と同様に廃棄日・担当者・対象ファイル名を記録に残すことが個人情報保護法対応の基本です。「削除した気がする」では監査対応や問い合わせへの対応ができません。
まとめ
- 採用者の履歴書は退職後5年(当面3年)の保管義務がある。不採用者は法的義務なしだが速やかな廃棄が原則
- 電子化はスキャナー・スマホアプリ・電子履歴書ツールの3種類。スマホ使用時は端末のカメラロールに個人情報が残る点に注意
- クラウドストレージは共有設定を誤ると個人情報漏えいのリスク。アクセス権限を採用担当者のみに限定する
- 電子化保管は紙保管より検索性・テレワーク対応・スペース効率の面で優れている
- 廃棄は「記録を残す」ことが最重要。紙はシュレッダー・溶解処理、電子は完全削除ソフトを使用し、廃棄日と担当者を記録する
電子化・保管・廃棄の一連のフローを社内ルールとして文書化しておくことで、担当者が変わっても安定した個人情報管理ができる体制が整います。
履歴書の電子化・保管に関するよくある質問
- 不採用者の履歴書はいつまでに廃棄すればよいですか?
-
個人情報保護法の観点から、不採用が確定した時点で速やかに廃棄または返却するのが原則です。実務上は採用選考中のトラブル対応のため6ヶ月〜1年程度保管する企業もありますが、保管する場合は期間を社内ルールとして明文化し、廃棄日を記録することが必要です。無期限の放置は個人情報保護法違反になるリスクがあります。
- スマホで撮影した履歴書画像の個人情報はどう管理すればよいですか?
-
スマホで撮影した履歴書画像はカメラロールに保存されるため、そのまま放置すると個人情報の管理上問題になります。撮影・PDF変換が完了したら、端末上の元画像はすぐに削除してください。また、個人のスマホではなく会社支給の端末を使用するのが望ましい対応です。
- 電子化した履歴書を求職者から返却してほしいと言われた場合はどうすればよいですか?
-
電子データは「返却」という概念がないため、「電子データを完全削除した旨を通知する」ことで対応します。求職者側が原本の紙の履歴書の返却を希望している場合は、個人情報保護の観点から応じることが望ましい対応です。事前に「不採用の場合の書類取り扱い」を募集要項に明記しておくと、後々のトラブルを防げます。
- Googleドライブで履歴書を保管しても問題ありませんか?
-
Googleドライブ自体は問題ありませんが、「誰がアクセスできるか」の設定が最重要です。「リンクを知っている全員が閲覧可能」の設定になっていると個人情報が外部に漏れるリスクがあります。採用担当者のGoogleアカウントのみに閲覧権限を限定し、フォルダへのアクセスを細かく制御してください。また、Googleのデータセンターの所在地(海外)が個人情報の越境移転に該当する場合がある点も確認しておくとよいでしょう。


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