この記事では、イラストレーターが転職・就職活動で提出する職務経歴書の書き方を、採用担当者の視点から解説します。ポートフォリオとの役割の違い、各項目の具体的な書き方、書類選考を通過するための実績の表現方法、フリーランス経験者向けの記載方法まで網羅します。
イラストレーターの職務経歴書で採用担当者が確認すること
「ポートフォリオがあるのに、なぜ職務経歴書が必要なのか」と感じるイラストレーターは少なくありません。実際、採用担当者はイラストのクオリティはポートフォリオで判断します。職務経歴書を読む目的はそこではありません。
採用担当者が職務経歴書で確認するのは、ポートフォリオには映らない「仕事の進め方」です。どれだけ優れた画力があっても、クライアントの要望を理解できなければ現場では機能しません。
採用担当者はここを見ている
- クライアントの要望を正確に理解して形にする力があるか
- 複数案件を並行しながら納期を守れるか
- ディレクターや編集者と円滑にやり取りできるか
- 修正・リテイク対応を業務として円滑にこなせるか
- 業務量・関わったプロジェクト規模が採用ポジションに合っているか
職務経歴書を「ポートフォリオの補足資料」として軽く扱うと、書類選考で落とされやすくなります。採用担当者にとって職務経歴書は「この人と一緒に仕事ができるか」を判断する書類です。センスや技術はポートフォリオに任せ、職務経歴書には「仕事の進め方・実績の規模感・対人スキル」を盛り込むことが選考通過のポイントになります。
職務経歴書で伝えるべき3つの軸
| 軸 | 伝えるべき内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 実績の規模感 | 担当した案件の数・媒体・期間 | 月平均7本、年間80点以上など |
| 制作の進め方 | ブリーフィング〜納品までどの工程に関与したか | クライアントとの直接打ち合わせ経験あり |
| 使用環境 | ツール・ソフト名とそのレベル感 | Photoshopでの仕上げ処理を単独で完結 |
イラストレーターの職務経歴書 書き方のコツ5選
コツ① 制作実績は「数字」で表現する
採用担当者が職務経歴書を読んで最も困るのは、実績が感覚的な言葉でしか書かれていないケースです。「多数の案件を担当」「さまざまな媒体で活躍」といった表現では、業務量の見当がつきません。
NG例
「さまざまな媒体向けにイラストを制作しました。」業務量・期間・クオリティの基準が何もわからない記述です。採用担当者は書類通過の判断ができません。
良い例文
「ゲーム向けキャラクターイラスト・背景イラストを中心に、月平均5〜8本を担当。3年間の勤務で累計約230点を納品し、担当タイトルのユーザー評価における”ビジュアル”項目でプラス評価を獲得しました。」
正確な数字が思い出せない場合は「月平均約○本」「年間おおよそ○点」という概算表現でも問題ありません。具体的な数字があることで、採用担当者がポジションのマッチ度を判断できるようになります。
コツ② 使用ツールは「何ができるか」まで書く
ツール名の列挙で終わる書き方では、他の応募者との差がつきません。採用担当者が知りたいのは「そのツールで何ができるか」です。レベル感を添えることで、即戦力かどうかの判断材料になります。
NG例
「使用ツール:Photoshop、Illustrator、CLIP STUDIO PAINT」ツール名の羅列だけでは、使いこなせるのか触る程度なのかが判断できません。
良い例文
「CLIP STUDIO PAINT(ラフ〜線画〜着色・仕上げまで一貫して担当、業務使用5年)、Adobe Photoshop(仕上げ処理・色調補正・複雑なマスク処理を含む加工を単独で完結)、Adobe Illustrator(ロゴ補正・文字組みなど補助的に使用)」
コツ③ クライアントとのやり取りを一文で示す
採用担当者がイラストレーターに最も期待するのは「センス」ではなく「コミュニケーション能力」です。どれだけ優れたイラストレーターでも、指示の意図を読み違えたり修正対応が遅かったりすると現場は機能しません。
クライアントとの折衝経験、ブリーフィングへの対応、制作前の調整業務がある場合は明記しましょう。「ディレクターを介さず、クライアントと直接打ち合わせを担当」という一文は、経験値を端的に示せます。折衝経験がない場合でも、「修正対応は平均2〜3回、期間内で完結」のような実績の書き方で誠実さを伝えられます。
コツ④ 制作物の種類と媒体を明確にする
イラストと一口に言っても、ゲームキャラクター・書籍挿絵・SNS広告・パッケージデザイン・Webバナーでは、求められる知識も経験も異なります。担当した制作物の種類と掲載媒体を明示することで、採用担当者は「自社の業務に合う経験かどうか」を判断できます。
- ゲームイラスト:キャラクターデザイン・スチルイラスト・UI素材など
- 出版・書籍:挿絵・装丁デザイン・絵本・教材用イラストなど
- 広告・商業:SNS広告、Webバナー、グッズデザイン、店頭POP等
- キャラクター・IP:グッズ展開を前提としたオリジナルキャラクター設定など
コツ⑤ 制作ワークフローへの関与範囲を書く
イラストレーターが業務に携わる範囲は「着色のみ」から「企画・ラフ・制作・納品まで一貫担当」まで幅広くあります。採用担当者は、どの工程を担当できるかを知ることで即戦力の度合いを判断します。どこからどこまで関与できるかを一文で書き添えると、選考通過率が変わります。
良い例文
「ブリーフィング→キャラクターコンセプト提案→ラフ→線画→着色→仕上げ→納品まで一貫担当。修正は通常2〜3回対応し、対応期間3日以内を維持していました。」
採用で落とされるNG例と通過する書き方の違い
NG例① スキル・ツール名の羅列のみ
「Adobe Illustrator・Photoshop・CLIP STUDIO PAINTが使えます」だけで終わる職務経歴書は、採用担当者には情報として機能しません。スキルが「ある」かどうかではなく、そのスキルで「どんな成果物をどの規模で生み出してきたか」を示す必要があります。
ツール名の後に「(業務使用○年・主な用途:○○)」を添えるだけで、採用担当者の読み取れる情報量が大きく変わります。
NG例② ポートフォリオのURLのみ記載
「詳しくはポートフォリオをご覧ください」という記述で職務経歴書をまとめる応募者がいます。採用担当者がポートフォリオを確認するのは選考の途中であり、書類選考の時点ではまず職務経歴書が評価対象になります。
職務経歴書とポートフォリオは別々の役割を持つ別書類です。一方を省略して他方に代替させる書き方は、書類選考の土俵に立てないリスクがあります。ポートフォリオのURLは職務経歴書に添えるのは問題ありませんが、それだけで業務内容の記述を省いてはいけません。
NG例③ 「絵が好き」という熱量だけで締める
「幼い頃から絵が好きで、その思いを仕事にしてきました」という書き方は、採用担当者にとって「感情的には理解できるが、採用の判断材料にならない」情報です。熱量は大切ですが、それを裏付ける行動実績と組み合わせて初めて説得力が生まれます。
熱量+実績を組み合わせた自己PR例
「イラスト制作を7年間継続し、現職では年間100点以上のキャラクターイラストを納品してきました。クライアントからのリピート率は80%を超えており、要望を正確に反映しながらスケジュールを守ることへの自信があります。」
イラストレーターの職務経歴書 各項目の書き方と例文
職務要約(プロフィール欄)の書き方
職務要約は採用担当者が最初に読む箇所です。3〜5行で「どんなイラストレーターなのか」を端的に示します。職歴年数・専門分野・扱える媒体・特徴的なスキルを盛り込みましょう。
職務要約 良い例文
「ゲーム会社にてキャラクターイラストレーターとして5年間勤務。スマートフォン向けRPGの基本キャラクター設計からイベント衣装差分まで、年間平均80〜100点の制作実績があります。ラフ〜仕上げまで一貫して担当し、外部クライアントとの直接折衝経験もあります。主な使用ツールはCLIP STUDIO PAINTとAdobe Photoshopです。」
職務経歴(業務内容)欄の書き方
職務経歴欄は、勤務先の概要(会社規模・事業内容)→担当業務→制作実績の順で記載するのが基本です。担当業務は箇条書きにすると読みやすくなります。
職務経歴欄 記載例
【会社概要】スマートフォン向けゲーム開発会社 従業員数約80名 20XX年4月〜現在
【担当業務】
- RPGタイトル3作品のキャラクターイラスト制作(ラフ〜仕上げ一貫担当)
- 月平均6〜8体のキャラクターデザイン・差分制作
- ゲームイベント用スチルイラスト制作(年間20〜30点)
- ディレクターとの進行確認ミーティング(週次)
- 外部クライアント向けブリーフィング対応・修正対応
【主な実績】累計制作点数260点以上、担当タイトルのレビューにおいてビジュアル評価で社内最高スコアを2年連続で記録
スキル・使用ツール欄の書き方
スキル欄はツール名だけでなく、習熟度の目安を添えると効果的です。以下の表を参考に、自分の状況に合わせて記載してください。
| ツール名 | 習熟度の目安 | 記載例 |
|---|---|---|
| CLIP STUDIO PAINT | 業務使用5年以上 | ラフ〜仕上げまで単独で完結 |
| Adobe Photoshop | 仕上げ処理担当 | 色調補正・マスク処理・書き出しまで担当 |
| Adobe Illustrator | 補助的に使用 | ロゴ補正・文字組みに使用 |
| Procreate | スケッチ・ラフ用途 | コンセプトスケッチ段階で使用 |
自己PR欄の書き方
自己PRは「強み+根拠となる経験+応募先での活用イメージ」の構成で書くと採用担当者に伝わりやすくなります。「絵が好き」という熱量だけでは書類選考を通過しにくいため、必ず実績と組み合わせましょう。
自己PR 良い例文
「前職ではゲーム会社にてキャラクターイラストレーターとして5年間勤務し、累計260点以上の制作実績を積んできました。強みはスケジュール管理と修正対応の速さです。月に最大10本の案件を並行しながら、一度も納期を遅延させたことがありません。クライアントとの直接折衝経験もあり、ブリーフィングから仕上げまで一貫して担当できます。貴社の制作業務においても、即戦力として貢献できると考えています。」
自己PRの末尾は「〜できます」という断定より、「〜という点で貢献できると考えています」のように応募先の業務との接続を意識した締めにすると採用担当者の印象が変わります。
職務経歴書の作成に時間をかけたくない方は、自動作成ツールを活用するのも選択肢のひとつです。

フリーランスイラストレーターの職務経歴書の書き方
職歴欄への記載方法
フリーランスとして活動していた期間は、職歴欄に「個人事業主として活動」と記載します。勤務先の欄には「フリーランス(個人事業主)」と明記し、開業年月と現在も活動中であれば「〜現在」と書きます。
フリーランスの職歴欄 記載例
20XX年○月 フリーランスイラストレーターとして独立
- 主な取引先:出版社3社、ゲーム会社2社、個人向けキャラクターデザイン受注
- 月平均受注本数:4〜6本
- 主な制作物:書籍挿絵、ゲームキャラクター、SNS広告用イラスト
- 年間受注額:約○○万円(参考)
個人事業主・フリーランス期間の職歴記載については、以下の記事で詳しく解説しています。

受注実績と年間売上の表現方法
フリーランスイラストレーターが最も悩むのは「実績をどう数字で表現するか」です。年間売上の記載は任意ですが、月平均案件数・制作点数・主な取引先の業種は積極的に記載しましょう。
- 月平均受注数:案件の多さと処理能力の目安になります
- 累計制作点数:長期的な業務実績の証明になります
- 主な取引先の業種:どの分野の仕事に慣れているかが伝わります
- リピート率・継続発注の実績:クライアント満足度の間接的な証明になります
年間売上を記載する場合、採用担当者は金額の多寡よりも「継続して受注を獲得し続けてきた実績があるか」を確認します。生活できる規模で事業を運営してきたという事実が、仕事への本気度と安定性の証明になります。
職務経歴書の内容に不安がある場合は、転職エージェントや添削サービスを活用することも選択肢のひとつです。

まとめ
- イラストレーターの職務経歴書は「ポートフォリオの補足書類」ではなく、「仕事の進め方」を伝える独立した書類
- 採用担当者が確認するのはクライアント対応力・納期管理・業務量の実績
- 制作実績は「月平均○本」「累計○点」などの数字で表現する
- ツール名は羅列するだけでなく、使用できる範囲とレベル感を添える
- フリーランス経験者は月平均受注数・累計点数・主な取引先業種を記載する
書類選考で差がつくのは画力ではなく、業務を言語化する力です。職務経歴書を丁寧に仕上げることが、次の選考ステップへの確実な足がかりになります。
イラストレーターの職務経歴書に関するよくある質問
- イラストレーターの職務経歴書にポートフォリオのURLを記載してもよいですか?
-
記載して問題ありませんが、ポートフォリオのURLだけで業務内容の記述を省くのは避けてください。採用担当者は書類選考の時点でポートフォリオを必ずしも確認するわけではなく、職務経歴書の記述だけで書類通過を判断するケースも多くあります。業務内容・実績をしっかり記載した上で、ポートフォリオURLを補足情報として添える形が理想的です。
- 正社員経験のないフリーランスイラストレーターでも職務経歴書は書けますか?
-
書けます。職歴欄に「フリーランス(個人事業主)」と記載し、活動期間・主な取引先の業種・月平均受注件数・累計制作点数などを記載します。取引先の企業名や作品名を具体的に出せる場合は積極的に記載してください。正社員経験がなくても、継続した実績があれば採用担当者に業務遂行能力を伝えることは十分可能です。
- 職務経歴書の使用ツールに「Adobe Illustrator」と書くと名前で混乱しませんか?
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採用担当者はAdobe Illustratorとイラストレーター(職種)を混同することはありません。スキル欄には正式なソフトウェア名「Adobe Illustrator」と記載してください。ただし、イラスト制作の主要ツールがCLIP STUDIO PAINTやPhotoshopの場合は、実際に業務で最も使用するツールを優先して記載しましょう。Adobe Illustratorをほとんど使わないのに上位に書くと、採用担当者の期待とのズレが生じる場合があります。
- イラストレーターの職務経歴書は何枚が適切ですか?
-
一般的にはA4で1〜2枚が適切です。勤務先が1社でキャリアが3〜5年以内であれば1枚、複数社に勤務していたり10年以上のキャリアがある場合は2枚にまとめることが多いです。フリーランス期間が長い場合も、案件をすべて列挙するのではなく主要な実績に絞って記載してください。枚数で評価されるものではなく、読みやすく整理されているかどうかが採用担当者の判断基準になります。
- アピールできる「数字」がない場合はどうすればよいですか?
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「数字が出せない」と感じる場合でも、振り返ると月に制作した点数・関わったプロジェクト数・担当期間などの数字は必ずあります。正確な数字がわからない場合は「月平均約○点」「年間おおよそ○本」などの概算表現でも問題ありません。それでも難しい場合は、制作物の種類の多様さ・クライアントの規模感(大手・中堅・個人など)を補足情報として加えると、採用担当者への伝わり方が変わります。


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