退職届は会社の用紙に必ず書かなければならないものではなく、就業規則に「所定様式による」との定めがなければ自由な形式で作成できます。会社から用紙を渡された場合は、その用紙に記入すれば問題ありません。この記事では、会社書式を使う際の法的な位置づけと、サインする前に確認しておきたい注意点、記入例まで解説します。
退職届は会社が用意した用紙で書いてOK?結論
結論|書式指定がなければ自由、就業規則の「所定様式」があれば従う
会社から退職届の用紙を渡された場合、その用紙を使って問題ありません。民法には退職届の書式に関する規定がなく、退職の意思表示は口頭でも書面でも有効です。会社が独自に用意した用紙は、あくまで手続きを円滑にするための会社側の運用にすぎず、それに従うかどうかは本来労働者の任意です。
ただし、就業規則に「退職の申し出は所定の様式による」といった規定がある場合は話が変わります。就業規則は労使間の契約内容の一部となるため、この規定がある会社では会社の用紙を使うことが実質的な義務になります。用紙を渡されたら、まずは深く考えず記入して構いませんが、独自の書式で提出したい事情がある場合は、就業規則を先に確認しておくと後のトラブルを避けられます。
会社の用紙をもらったときの記入例
会社の用紙には、あらかじめ「退職届」というタイトルや宛名、署名欄が印刷されていることが多く、空欄を埋めるだけで作成できます。代表的な記入項目と書き方は次のとおりです。
| 記入項目 | 書き方 |
|---|---|
| 退職理由欄 | 自己都合退職なら「一身上の都合」と記入する |
| 退職希望日 | 上司と話し合って決めた日付を西暦・和暦どちらでも記入する |
| 提出日 | 用紙を提出する当日の日付を記入する |
| 所属・氏名 | 部署名・氏名をフルネームで記入し、押印欄があれば認印を押す |
| 宛名 | 会社名・代表者名を記入する(すでに印字されていれば不要) |
会社の用紙がない・もらえない場合の書き方
用紙をもらえていない段階でも、自分で作成して提出することができます。白紙の便箋またはコピー用紙に、縦書きで「退職届」「私儀」「一身上の都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたします」という要件を満たして作成すれば、法的な効力は会社の用紙と変わりません。
用紙をもらう予定がある場合でも、渡されるまで待つ必要はなく、先に自分で作成したものを提出し、後から会社の様式で書き直しを求められれば対応する、という進め方でも支障はありません。
会社に用紙を用意する義務はあるのか|法律と就業規則の関係
民法上、退職届の書式に決まりはない
民法627条は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる」と定めているだけで、申入れの書式については何も規定していません。つまり退職届は、法律上「会社が用意してくれるもの」でも「会社指定の書式に書かなければならないもの」でもなく、口頭での申し出だけでも退職の意思表示としては成立します。
会社が独自の用紙を用意して「これに記入してください」と案内する行為は、退職手続きを社内で統一的に処理するための運用ルールであり、法律上の義務から来ているわけではありません。この前提を知っておくと、用紙の扱いに過度に身構える必要がないと分かります。
就業規則に「所定様式による」とあれば従う必要がある
一方で、就業規則は労働契約の一部として労使双方を拘束します。就業規則に「退職を願い出るときは所定の様式による」といった文言が明記されている会社では、会社の用紙を使うことが契約上のルールになります。この規定の有無は会社によって異なるため、迷ったときは就業規則を確認するか、総務・人事に直接尋ねるのが確実です。
人事・総務担当者はここを見ている
- 就業規則どおりの様式で提出されているか(規定がある会社の場合)
- 退職希望日が明確に記載され、引き継ぎ計画を立てられる状態か
- 押印・署名欄に記入漏れがなく、そのまま人事手続きに回せるか
会社の用紙が「退職願」表記になっているケースに注意
会社が用意した用紙のタイトルが「退職願」となっている場合は注意が必要です。退職願は会社の承諾を得るための申し出であり、承諾前であれば撤回できる余地が残ります。一方、退職届はすでに決まった退職の意思を伝える書面で、原則として撤回できません。どちらの用紙が渡されたのかを確認したうえで提出することで、後から「やっぱり撤回したい」と思ったときの選択肢が変わってきます。
退職届と退職願の違いをより詳しく知っておきたい場合は、以下の記事も参考にしてください。

会社の用紙にサインする前に確認すべき注意点
会社の用紙をそのまま使うこと自体に問題はありませんが、記入して提出する前に目を通しておきたいポイントがあります。特に退職理由欄や日付欄が空欄のまま渡されるケースでは、記入内容によって後の手続きに影響が出ることがあります。
退職理由欄・日付欄が空欄のまま渡された場合
退職理由欄が空欄になっている用紙では、自分から退職を申し出た場合は「一身上の都合」と記入するのが基本です。会社都合による退職なのに「一身上の都合」と書いてしまうと、失業給付の受給条件や給付開始時期に影響することがあるため、自己都合か会社都合かを曖昧にせず、事実に沿って記入してください。
退職希望日の欄が空欄の場合は、会社側が記入を求めているサインです。空欄のまま提出すると、退職日があやふやなまま手続きが進むおそれがあるため、上司との話し合いで決めた具体的な日付を必ず記入してから提出してください。
不利な条項が入っていないか確認するポイント
会社独自の用紙の中には、退職届としての基本項目に加えて、以下のような一文が盛り込まれている場合があります。記入・押印する前に内容を確認しておくと安心です。
- 有給休暇の権利放棄に関する記載:残った有給休暇を消化せず放棄する内容が含まれていないか
- 秘密保持・競業避止に関する誓約:転職先の選択に過度な制限がかかる内容になっていないか
- 損害賠償や違約金に関する記載:法的根拠のない金銭請求を前提とした文言が含まれていないか
こうした条項は、労働者に一方的に不利な内容であれば法的効力が認められないこともありますが、内容を理解しないまま署名すると後々のトラブルの火種になります。気になる文言があれば、その場でサインせず、内容を確認してから提出するようにしてください。
状況別|会社の用紙で書くときの例文とNG例
良い例(会社の所定用紙に記入する場合)
退職理由欄:一身上の都合
退職希望日:令和〇年〇月〇日
所属:〇〇部〇〇課
氏名:山田太郎 印
NG例
退職理由欄に「上司との折り合いが悪いため」など個人的な不満をそのまま記載するのは避けてください。会社都合と誤解されたり、後の関係に不要な摩擦を生んだりする原因になります。事実に反しない範囲で「一身上の都合」とまとめるのが無難です。
状況別|退職理由欄がある場合の書き方
用紙のフォーマットによっては、理由欄に選択式のチェックボックスが用意されていることもあります。「自己都合」「会社都合」の選択欄がある場合は、実態と異なる項目にチェックしないよう注意してください。契約更新の見送りやリストラなど、会社側の事情による退職であれば「会社都合」を選び、退職理由欄にも会社側の事情である旨を簡潔に記載します。
自己都合か会社都合かの記載内容で迷う場合や、より詳しい書き方を確認したい場合は、次の記事も参考になります。

会社が用紙を用意してくれない・催促しにくい場合の対処法
まず就業規則・総務に確認する
退職を申し出たのに用紙が渡されない場合、多くは「所定用紙はあるが、退職の申し出があるまで渡さない運用になっている」だけのケースです。総務や人事に「退職届の用紙はありますか」と一言確認すれば、多くの場合はすぐに渡してもらえます。用紙の有無を確認すること自体は、退職の意思をあらためて示す機会にもなります。
用紙がない場合は自分で退職届を用意してよい
会社に所定の用紙自体が存在しない、あるいは催促しても対応してもらえない場合は、自分で作成した退職届を提出して問題ありません。前述のとおり退職届の書式に法律上の決まりはなく、必要事項さえ満たしていれば会社の用紙がなくても手続きは進められます。受理そのものを拒まれてしまう場合の対処法は、以下の記事で詳しく解説しています。

退職後は転職先に提出する応募書類の準備も並行して進めておくと、手続きが一段落したタイミングでスムーズに動き出せます。
転職用の履歴書テンプレートを使えば、退職手続きと並行しても書類作成に時間を取られずに済みます。公的な様式に沿った書類を求められる応募先であれば厚生労働省の規格に沿った履歴書テンプレート、レイアウトを整えたい場合はJIS規格に沿った履歴書テンプレートを使うと迷わずに済みます。
まとめ
- 退職届は法律上、会社の用紙を使う義務はないが、就業規則に「所定様式による」規定があれば従う必要がある
- 会社の用紙をもらったら、退職理由・退職希望日・所属氏名を漏れなく記入すればよい
- 記入前に、有給休暇の放棄や競業避止など不利な条項が含まれていないか確認する
- 用紙をもらえない場合は総務に確認するか、自分で作成した退職届を提出してよい
会社の用紙は使っても使わなくても退職の効力に違いはありません。内容を確認したうえで、落ち着いて手続きを進めてください。
退職届の会社用紙に関するよくある質問
- 会社の用紙を使わず、自分で作成した退職届を提出してもいいですか?
-
就業規則に「所定様式による」との規定がなければ問題ありません。必要事項を満たしていれば、便箋やコピー用紙で作成した退職届でも法的な効力は会社の用紙と変わりません。
- 会社の用紙のタイトルが「退職願」でした。書き直した方がいいですか?
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退職願は会社の承諾を前提とした申し出であり、承諾前であれば撤回できる余地が残ります。すでに退職の意思が固く撤回する予定がないなら、そのまま提出しても手続き上は問題ありませんが、確実に退職の意思を示したい場合は「退職届」として作成し直すことも検討してください。
- 会社の用紙に押印欄がありますが、印鑑がない場合はどうすればいいですか?
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認印があれば押印し、手元にない場合は総務に相談してください。押印を必須とするかどうかは会社の運用によるため、押印なしでも受理される場合があります。
- 退職理由欄に会社への不満をそのまま書いてもいいですか?
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避けた方が無難です。自分から申し出た退職であれば「一身上の都合」とまとめて記載するのが基本で、個人的な不満をそのまま書くと不要な摩擦を招くことがあります。

