退職届は会社の人事権限を持つ人に到達した時点で効力が生じ、原則として一方的な取り下げはできません。ただし会社が同意すれば撤回でき、強迫や錯誤による意思表示であれば取り消しも可能です。すでに提出して後悔している方に向けて、撤回できるタイミングの見極め方と、今すぐ取るべき行動、退職撤回通知書の書き方まで解説します。
退職届は取り下げできる?結論と撤回できるタイミング
結論
退職届は、会社の人事権限を持つ人に到達した時点で法律上の効力が生じます。到達後は会社の同意がない限り、一方的に取り下げることはできません。ただし、まだ人事権限者の手元に届いていない段階や、会社側が撤回に応じてくれる場合は、取り下げが認められる可能性があります。
まずは提出した退職届が今どの段階にあるのか(上司止まりか、人事まで届いているか)を確認することが、取り下げできるかどうかを左右する最初のポイントです。
【比較表】撤回できるタイミングと理由
| 状況 | 撤回できるか | 理由 |
|---|---|---|
| まだ提出していない(相談段階) | 撤回できる | 意思表示自体が発生していない |
| 提出したが上司の手元で止まっている | 撤回できる可能性が高い | 人事権限者にまだ到達していない |
| 人事権限者に到達・受理された | 原則できない(会社の同意があれば可) | 一方的な意思表示として効力が発生済み |
| 強迫・錯誤・詐欺によって書かされた | 取り消せる | 民法上、意思表示に瑕疵があるとみなされる |
今すぐ取るべき3つの行動
- 退職届が今どこにあるか(上司の手元か、人事まで回っているか)を確認する
- 直属の上司に、できるだけ早く「至急ご相談したいことがあります」と伝える
- 口頭だけでなく、メールやチャットなど日付が残る形で撤回の意思を記録に残す
退職届が取り下げできない理由|到達主義と一方的な意思表示
民法上、意思表示は相手に届いた時点で効力が生じる「到達主義」が原則です。退職届は「〇月〇日に退職します」と一方的に通知する書類で、退職願のように会社の承諾を必要としません。人事権限を持つ担当者に書類が到達した時点で、法律上は撤回できない状態になります。無期雇用契約の場合、民法627条1項により意思表示から2週間で契約が終了する点も、退職願との大きな違いです。
退職届と退職願のどちらを出したかによって、撤回できる余地は大きく変わります。まだ提出前で迷っている場合は、書類選びの段階から見直すのも一つの方法です。
会社・人事担当者はここを見ている
- 退職届が誰の手元にあるか(直属の上司止まりか、人事に回っているか)
- 受理・承諾の権限を持つ人物にすでに届いているかどうか

例外的に取り下げが認められるケース|強迫・錯誤・詐欺
到達後の退職届は原則として撤回できませんが、意思表示そのものに問題があった場合は例外です。民法上、次の3つに該当すれば取り消しを主張できる余地があります。
- 強迫:「辞めないと懲戒解雇にする」などと脅されて書いた
- 錯誤:事実と異なる説明を信じ込まされ、勘違いしたまま書いた
- 詐欺:だまされて退職届を書かされた
良い例文
先日提出した退職届について、ご相談させてください。提出時は〇〇の件で強く退職を求められ、十分に考える時間がないまま書いてしまいました。落ち着いて考え直したところ、引き続き勤務を続けたいと思っております。改めてお時間をいただけますと幸いです。
NG例
やっぱり辞めるのをやめたいので、なかったことにしてください。
気持ちが変わったことだけを伝えても、会社側には撤回すべき理由が伝わりません。どのような事情で考え直したのかを具体的に説明することが、認めてもらうための第一歩です。
会社・人事担当者はここを見ている
- 強迫・錯誤・詐欺にあたる具体的な事実関係が説明できているか
- 単なる気持ちの変化ではなく、正当な理由が伴っているか
- 感情的な訴えだけでなく、今後も働き続ける意思が明確か
【状況別】退職届の取り下げの伝え方と例文
提出直後・受理前の場合
提出したばかりで、まだ人事権限者の手元に届いていないと考えられる場合は、口頭での申し出でも撤回できる可能性が高い段階です。時間を置かず、直属の上司にすぐ相談しましょう。
良い例文(口頭の切り出し方)
お忙しいところ恐れ入ります。先日お渡しした退職届の件で、至急ご相談したいことがございます。改めて考え直し、撤回させていただけないかとご相談に参りました。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
NG例
同僚経由で「やっぱりやめるのやめるって伝えておいて」と又聞きで済ませてしまう。
撤回の意思は本人から直属の上司へ直接伝えるのが原則です。第三者を介した申し出は正式な意思表示と認められず、手続きが進んでしまう恐れがあります。
受理後・時間が経ってしまった場合
すでに受理されている場合、口頭の申し出だけでは会社が応じてくれないケースもあります。法的拘束力はありませんが、書面で記録を残すことがトラブル防止につながります。
良い例文(退職撤回通知書)
退職撤回通知書
令和〇年〇月〇日付にて提出いたしました退職届につきまして、下記の理由により撤回させていただきたく、ご通知申し上げます。
提出日:令和〇年〇月〇日
撤回理由:〇〇のため
令和〇年〇月〇日
〇〇部〇〇課 山田太郎
株式会社〇〇 代表取締役〇〇〇〇殿
NG例
撤回理由を書かず、「撤回します」とだけ一方的に通知する。
理由が書かれていないと、会社側は撤回に応じるかどうかの判断材料がありません。誠意を示す意味でも、理由と今後の意欲は必ず添えてください。
撤回が認められず退職が確定する場合に備えて、次の転職活動の準備を並行して進めておくと安心です。応募書類に迷ったら転職用の履歴書テンプレートを、様式に迷ったら厚生労働省の規格に沿った履歴書テンプレートを活用すると準備がスムーズです。
取り下げを申し出るときの注意点
取り下げが認められたとしても、それで終わりではありません。撤回の申し出は上司や人事に強い印象を残すため、その後の働き方にも影響することを理解しておく必要があります。
- 撤回後も気まずさが残りやすく、周囲との関係修復には時間がかかる場合がある
- 評価や今後の配置に影響する可能性があることを踏まえておく
- 提出と撤回を繰り返すと、次に本当に退職を伝えたいときに信用されにくくなる
会社が撤回に応じてくれず、退職の意思を貫く場合は、無理に取り下げにこだわらず次の一歩に切り替えるのも選択肢です。会社側が撤回を拒否できるかどうかで悩んでいる場合は、こちらの記事もあわせて参考にしてください。

パート・アルバイトの場合も、取り下げの手順は正社員と変わりません。次の応募に向けてパート用の履歴書テンプレートやアルバイト用の履歴書テンプレートも確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。
まとめ
- 退職届は人事権限者に到達した時点で効力が生じ、原則として一方的な取り下げはできない
- 未到達の段階や会社の同意があれば撤回でき、強迫・錯誤・詐欺があれば取り消しも可能
- 撤回を申し出るときは、理由を具体的に伝え、書面で記録を残すと安心
- 撤回後の気まずさや評価への影響も踏まえたうえで判断する
退職届を出した後の後悔は珍しいことではありません。今の状況を整理し、正しい手順で早めに動くことが、取り下げできる可能性を最大限に広げます。
退職届の取り下げに関するよくある質問
- 退職届を出した翌日ならまだ取り下げできますか?
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人事権限者にまだ届いていなければ撤回できる可能性が高い段階です。日数よりも「誰の手元にあるか」が重要なので、まずは提出先に書類の状況を確認しましょう。
- 会社が取り下げを拒否したらどうなりますか?
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退職届が正式に到達・受理されている場合、会社には撤回に応じる法的義務がありません。ただし強迫・錯誤・詐欺にあたる事情があれば、取り消しを主張できる余地があります。
- 退職届と退職願では取り下げやすさに違いがありますか?
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退職願は会社の承諾前であれば撤回しやすいのに対し、退職届は提出時点で一方的な意思表示となるため、退職願より撤回のハードルが高くなります。
- 退職撤回通知書に決まった書式はありますか?
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法律で定められた書式はありません。提出日・撤回理由・日付・氏名・宛名を明記し、会社に控えを残しておけば、口頭のみより認められやすくなります。

