この記事では、履歴書の職歴欄に派遣先の社名は省略できますが、派遣元(派遣会社)は省略できませんという線引きを軸に解説します。省いてよい条件、省くと経歴詐称を疑われるパターン、守秘義務で社名を出せないときの書き方を記入例つきでまとめました。
履歴書に派遣先を書かないのはOK?結論と判断基準
結論:派遣先は省略できるが、派遣元は絶対に省けない
履歴書の職歴欄で省略の可否が分かれるのは、その会社があなたと雇用契約を結んでいたかどうかです。派遣社員の雇用主は就業先の企業ではなく、登録している派遣会社になります。
つまり派遣先の社名は「どこで働いたか」を示す補足情報であり、書かなくても職歴そのものは成立します。一方で派遣元を書かなければ、その期間はどこにも雇用されていない空白期間として読まれてしまいます。
省略の可否
- 派遣元(派遣会社):省略不可。雇用契約の相手であり、書かないと空白期間扱いになる
- 派遣先(就業先企業):省略可。ただし省いた分の情報は別の形で補う必要がある
派遣先を書かなくてよいケース・書いた方がよいケース
省略していいかどうかは、社名が応募先へのアピールになるかで判断します。誰もが知る大手企業や、応募先と同業種の企業で就業していたなら、社名は強力な材料です。逆に3か月で終わった無名企業の名前を並べても、読み手には情報が増えません。
| 状況 | 派遣先の社名 | 理由 |
|---|---|---|
| 応募先と同業種の企業で就業していた | 書く | 業界知識がある証明になる |
| 知名度の高い大手企業で長期就業 | 書く | 就業実績そのものが評価材料 |
| 派遣先が5社以上あり欄に収まらない | まとめる | 羅列すると読みにくく印象が散る |
| 1〜3か月の短期が中心 | 省略可 | 社名より通算経験の方が伝わる |
| 守秘義務で社名を出せない | 書かない | 契約違反になるおそれがある |
派遣先を省いた職歴欄の記入例
派遣の職歴では「入社」「退社」は使いません。派遣会社には登録し、派遣先へ就業し、契約が終われば契約期間満了により退職と書きます。派遣先を省く場合も、この骨格は変わりません。
良い例文(派遣先を省いた書き方)
2021年4月 株式会社〇〇スタッフ 登録
精密機器メーカー(従業員約800名)にて営業事務として就業
受発注処理・見積書作成・電話応対を担当
2024年3月 契約期間満了により退職
社名は伏せていますが、業種・規模・職種が入っているため、読み手はどんな環境で何をしていたかを具体的に思い描けます。
NG例
2021年4月 株式会社△△製作所 入社
2024年3月 一身上の都合により退職
派遣先だけを書き、派遣元を省いた書き方です。直接雇用の正社員だったと誤解させる記載であり、経歴詐称を疑われる典型例にあたります。「入社」という表記も派遣では使いません。
採用担当者はここを見ている
- 雇用主がどこかが1行目で判別できるか(派遣元が書かれているか)
- 就業期間が途切れなくつながっているか
- 社名を伏せている場合、業務内容の記述で補えているか
職歴欄の行数が足りず書ききれないときは、そもそも用紙の選び直しから始めると解決することがあります。職歴欄が広いフォーマットを探している方は厚生労働省の様式例に沿った履歴書テンプレートを使うと、余計な項目に行を取られずに済みます。
派遣元を書かないと経歴詐称を疑われる理由
雇用主は派遣先ではなく派遣元
派遣という働き方は、雇用契約を結ぶ相手と指揮命令を受ける相手が分かれている点に特徴があります。給与を支払い、社会保険をかけ、雇用契約書を交わすのは派遣会社です。派遣先は業務の指示を出すだけで、雇用関係はありません。
履歴書の職歴欄は「どの会社に雇われていたか」を示す欄です。ここに派遣先だけを書けば、事実と異なる雇用関係を申告したことになります。悪意がなくても、書類上は詐称と同じ形になってしまいます。
保険の加入記録で食い違いが出る
内定後の入社手続きでは、雇用保険被保険者証や年金手帳の情報を提出します。ここに記録されている事業所名は派遣会社です。履歴書に派遣先しか書いていなければ、提出書類と履歴書の会社名がまったく一致しません。
食い違いが表に出るタイミング
- 雇用保険の資格取得手続きで前職の事業所名が判明したとき
- 面接で「その会社では正社員でしたか」と確認されたとき
- リファレンスチェックで在籍照会が行われたとき
採用担当者の立場からすると、派遣歴があること自体はまったく問題になりません。困るのは、雇用形態を誤認させる書き方をされて、入社手続きの段階で辻褄が合わなくなることです。隠したい気持ちが裏目に出て信用を失うのが、この省略の一番もったいないところです。
派遣先を書かない方がうまくいく3つのケース
派遣先が多く職歴欄に収まらない
派遣先が5社、6社と続くと、社名を全部書くだけで職歴欄が埋まります。読み手には「短い就業を繰り返した人」という印象だけが残り、何ができる人なのかは伝わりません。この場合は派遣元でひとまとめにして、就業内容を集約する書き方が有効です。
良い例文(複数の派遣先をまとめる)
2019年6月 株式会社〇〇キャリア 登録
金融・保険業界を中心に一般事務として複数企業へ就業
データ入力・書類審査補助・顧客対応を担当
2024年9月 契約期間満了により退職
個別の社名を出さない代わりに業界を絞って書くことで、一貫した経験を積んできた人という読まれ方に変わります。
派遣先が多い方の職歴欄の整理方法は、下の記事でパターン別に紹介しています。

守秘義務で社名を出せない
派遣元と派遣先の間で秘密保持契約が結ばれており、就業先の社名や業務内容を外部に開示できないケースがあります。金融、医療、官公庁関連の案件では珍しくありません。この場合は、社名を書かないのが正しい対応です。
ここで大事なのは、黙って空欄にしないことです。書けない理由を一言添えるだけで、隠しているのではなく契約を守っているのだと伝わります。
良い例文(守秘義務がある場合)
2022年10月 株式会社〇〇ワークス 登録
金融機関にて事務職として就業(守秘義務により社名の記載は控えます)
口座開設書類の点検・データ入力を担当
2025年3月 契約期間満了により退職
NG例
2022年10月 株式会社〇〇ワークス 登録
某企業にて就業
2025年3月 退職
「某企業」だけでは業種も職種も伝わりません。伏せるのは社名だけで、業務内容まで伏せる必要はないという点を取り違えた書き方です。
どこまで書いてよいかの線引きに迷ったら、履歴書を出す前に派遣元の担当者へ確認してください。契約内容は案件ごとに違うため、自己判断で決めない方が確実です。
短期・単発の派遣が混ざっている
数日から1か月程度の単発派遣は、一つひとつ社名を書くと職歴欄が細切れになります。応募先が求めているのは職歴の網羅ではなく、あなたが何をどれだけできるかの見通しです。単発分は派遣元でまとめ、通算期間と担当業務で示す方が伝わります。
ただし、まとめ方を誤ると空白期間があるように見えます。単発・短期の扱い方は下の記事で詳しく整理しています。

派遣先を書かないときに必ず添える3つの情報
社名を省くと、その分だけ読み手が持つ情報が減ります。減った情報を埋め合わせるのが、業種・規模・職種の3点です。この3つが揃っていれば、社名がなくても就業環境はほぼ再現できます。
| 添える情報 | 書き方の例 | 読み手に伝わること |
|---|---|---|
| 業種 | 精密機器メーカー/損害保険会社/総合病院 | 業界知識・専門用語への慣れ |
| 規模 | 従業員約800名/全国60拠点/社員20名の事業所 | 組織の中での立ち回り方 |
| 職種・業務 | 営業事務(受発注・見積作成)/経理補助(仕訳入力) | 入社後にすぐ任せられる範囲 |
採用担当者はここを見ている
- 社名の知名度よりも、任されていた業務範囲の広さ
- 同じ業界を続けているか、業界がばらついているか
- 使っていた業務システムやソフトの記載があるか
履歴書の職歴欄は行数が限られているため、3点セットを入れるとすぐ埋まります。書ききれない実務の中身は職務経歴書に回すのが定石です。派遣就業の実績を整理したい方は派遣の職務経歴書テンプレート、事務職での応募なら事務の職務経歴書テンプレートが使えます。
派遣先を書かない人が落ちるときの共通点
派遣先を省いたこと自体が原因で落ちるケースはほとんどありません。落ちるのは、省いた結果として職歴欄が読み手にとって意味のない情報になってしまったときです。
- 期間だけが並んでいる:業務内容がなく、何をしていた人か判断できない
- 「事務」「軽作業」で止めている:範囲が広すぎて任せられる仕事を特定できない
- 派遣元も省いている:雇用形態を誤認させ、確認の手間を発生させる
- 就業期間がつながっていない:省略した契約の分だけ空白が生まれている
とくに最後の一点は見落とされがちです。書かないと決めた派遣先の就業期間も、派遣元での登録期間としては続いています。年月が途切れて見える職歴欄は、それだけで面接での質問対象になります。
退職の書き方でも印象は変わります。派遣は契約満了での終了が大半ですが、そこを「一身上の都合」と書くと自己都合退職を繰り返した人に見えてしまいます。

正社員への転職で使う用紙は、アルバイト用や新卒用とは項目構成が異なります。職歴欄の行数を優先するなら転職用の履歴書テンプレートから始めてください。
まとめ
- 派遣先の社名は省略できるが、雇用主である派遣元は省略できない
- 派遣先だけを書いて「入社」と記載すると、経歴詐称を疑われる
- 派遣先が多い、守秘義務がある、短期中心の場合は省略した方が読みやすい
- 社名を省くときは業種・規模・職種の3点で情報を補う
- 守秘義務がある場合は「守秘義務により記載を控えます」と理由を明記する
職歴欄で問われているのは社名の数ではなく、あなたが何を任されてきたかです。書く社名を減らした分、業務の中身を一行増やしてください。
履歴書の派遣先の書き方に関するよくある質問
- 派遣先を書かないと経歴詐称になりますか?
-
派遣先の社名を省くだけであれば経歴詐称にはあたりません。雇用主である派遣元を記載し、就業期間が正しく書かれていれば問題ありません。経歴詐称が疑われるのは、派遣元を省いて派遣先だけを書き、直接雇用だったように見せた場合です。
- 派遣会社に登録しただけで就業しなかった期間は書くべきですか?
-
登録しただけで実際の就業がなかった期間は、職歴には書きません。雇用契約が発生していないためです。その期間が長く空白として目立つ場合は、資格取得や求職活動の内容を本人希望欄などに一行添えると説明になります。
- 派遣の職歴に「入社」「退社」と書いてはいけませんか?
-
派遣では使いません。派遣会社には「登録」、派遣先へは「就業」、終了時は「契約期間満了により退職」と書きます。「入社」と書くと直接雇用だったと受け取られ、後の手続きで食い違いが生じます。
- 守秘義務があるかどうかは、どこで確認できますか?
-
派遣元の営業担当者に問い合わせるのが確実です。秘密保持の範囲は案件ごとの契約で決まっており、就業していた本人が契約書の全文を見ていないことも多いためです。応募書類を出す前に確認してください。
- 履歴書で派遣先を省いた場合、職務経歴書にも書かなくていいですか?
-
守秘義務が理由であれば、職務経歴書でも社名は伏せて構いません。ただし職務経歴書は実務の中身を伝える書類なので、担当業務・使用ツール・成果は具体的に書いてください。履歴書と職務経歴書で記載を食い違わせないことも大切です。

