建築設計の職務経歴書は、プロジェクト実績欄を「物件種別・延床面積・構造・担当フェーズ」で具体的に書くことが通過の分かれ目です。採用担当者がどこを見て合否を判断しているか、NG例と改善例、意匠・構造・設備別の自己PR例文まで、実務に即した内容でまとめました。
建築設計の職務経歴書が「書類選考の勝負どころ」である理由
建築設計職の転職において、職務経歴書は面接の前段階で合否を左右する最重要書類です。ポートフォリオを別途提出できる職種ではありますが、採用担当者が最初に手に取るのは職務経歴書です。ここで「この人は面接に呼ぶ価値がある」と判断されなければ、どれだけ優れたポートフォリオも開いてもらえません。
ポートフォリオがあっても職務経歴書は手を抜けない
「設計の実績はポートフォリオに入れているから職務経歴書は薄くていい」と考える応募者は少なくありません。しかし現実には、書類選考の段階でポートフォリオを詳しく確認する採用担当者はほとんどいません。
採用担当者はここを見ている
- 職務経歴書だけで「どんな規模の、どんな建物を、どのフェーズで担当したか」が読み取れるか
- ポートフォリオに頼った薄い職務経歴書は「自分の経歴を言語化できない人」という印象を与えることがある
- 書類選考を通過したあとにポートフォリオを深掘りするのが採用担当者の一般的な流れ
職務経歴書は「ポートフォリオへの入口」ではなく、あなたの実力を言葉で証明する文書として位置づけてください。ポートフォリオと職務経歴書はそれぞれ独立して評価されます。

採用担当者が最初に目を向ける「3つの箇所」とは
採用担当者が職務経歴書を最初に通し読みする時間は、30秒〜1分程度と言われています。この短時間で「面接に呼ぶかどうか」を判断するため、以下の3箇所を優先的に確認しています。
| 確認箇所 | 採用担当者が見るポイント |
|---|---|
| ①職務要約(冒頭) | 経験年数・得意な物件ジャンル・強みが一目でわかるか |
| ②プロジェクト実績一覧 | 物件の規模・構造・担当フェーズが具体的に書かれているか |
| ③スキル・資格 | 一級建築士の有無・使用CAD/BIMソフトが明記されているか |
この3箇所で「自社の求める人物像と合致する」と判断されれば、詳細を読んでもらえます。逆に言えば、この3箇所が伝わらない職務経歴書は、内容を読まれることなく選考から外れることがあります。
建築設計の職務経歴書に書くべき5つの項目
建築設計の職務経歴書には5つのセクションがあります。それぞれの役割と書き方のポイントを確認します。
①職務要約(サマリー)
職務要約は3〜5行で「何を・何年・どんな強みで」を伝える冒頭文です。採用担当者が最初に読む部分なので、最も伝えたいことを凝縮します。
良い例文
設計事務所にて10年間、主に医療・福祉施設(RC造・延床3,000〜8,000㎡)の意匠設計に従事しました。基本設計から実施設計・工事監理まで主担当として携わり、確認申請業務の経験もあります。AutoCADを主軸に、RevitによるBIM設計にも対応しています。一級建築士取得済み。
NG例
建築設計の業務に従事してきました。様々な物件を手がけ、CADの使用経験があります。「様々な物件」「CADの使用経験」では何も伝わらない。得意な物件ジャンル・担当フェーズ・ソフト名を必ず明記すること。
②プロジェクト実績一覧(最重要項目)
建築設計の職務経歴書で採用担当者の評価が最も分かれるのがこのセクションです。「どんな建物を・どのくらいの規模で・どのフェーズを担当したか」を表形式で一覧化することで、採用担当者が即座に実力を把握できます。
| 期間 | 物件名(概要) | 用途 | 延床面積 | 構造 | 担当フェーズ | 役割 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2019〜2021年 | 特別養護老人ホーム(新築) | 福祉施設 | 約3,800㎡ | RC造3階 | 基本設計〜実施設計 | 主担当 |
| 2021〜2023年 | 複合商業施設(改修) | 商業施設 | 約12,000㎡ | S造8階 | 実施設計・工事監理 | 主担当 |
採用担当者はここを見ている
- 「主担当」「サブ担当」「チームの一員」のどの役割だったか
- 基本設計・実施設計・工事監理のどのフェーズまで担当できるか
- 物件規模(延床面積・階数・構造)が自社の案件規模と合っているか
③担当業務の詳細
プロジェクト実績一覧の補足として、担当した具体的な業務内容を箇条書きで記載します。「設計業務だけ」の印象を避けるため、コミュニケーション・折衝・調整の経験も必ず含めることが採用担当者に響きます。
- 基本設計(平面計画・立面計画・断面計画・法規確認・建物配置計画)
- 実施設計(詳細図・仕様書・確認申請図書作成・各種届出対応)
- 工事監理(施工会社との定例打ち合わせ・是正指示・竣工検査)
- 施主・行政との折衝・プレゼンテーション(設計説明・変更協議)
④使用ソフト・ツール
CAD・BIMソフトは「ソフト名 + 使用年数 + 主な用途」の形式で記載します。「AutoCAD使用可」の1行で終わらせると採用担当者には何も伝わりません。
| ソフト | 使用年数 | 主な用途 |
|---|---|---|
| AutoCAD | 8年 | 実施設計図面の作成・修正・確認申請図書 |
| Revit | 3年 | BIMモデル作成・施主プレゼン用3D活用 |
| SketchUp | 4年 | デザインコンセプトの3Dプレゼン |
| Photoshop / Illustrator | 5年 | プレゼン資料・パース作成 |
BIMエンジニアやCAD専門職としての経験を前面に出したい場合は、エンジニアの職務経歴書テンプレートの項目立ても参考になります。
⑤資格・スキル
保有資格は「資格名・取得年月」を明記します。受験予定の資格がある場合は「○年度受験予定」と記載することで、向上意欲を示せます。
| 資格名 | 取得年 |
|---|---|
| 一級建築士 | ○年○月取得 |
| 建築施工管理技士(2級) | ○年○月取得 |
| (例)一級建築士 | ○年度受験予定 |

プロジェクト実績欄の書き方|採用担当者が評価する情報
「プロジェクト実績一覧」をどれだけ具体的に書けるかが、建築設計の職務経歴書で差がつく最大のポイントです。競合する応募者が「マンション等の設計に従事」という一言で終わらせる中、適切な情報を盛り込んだ実績欄は採用担当者の目に止まります。
物件種別・延床面積・構造を数字で示す
採用担当者が知りたいのは「この人はどのくらいの規模の仕事ができる人か」です。「住宅の設計を担当」という記述では規模感がまったく伝わりません。
良い例文
延床面積約3,500㎡・RC造4階建て・特別養護老人ホームの意匠設計(基本設計〜確認申請)を主担当として担当。施主との設計協議から行政との事前協議まで対応。
NG例
福祉施設の設計を担当。「福祉施設」だけでは規模感が何もわからない。物件種別・延床面積・構造・担当フェーズをセットで必ず明記すること。
設計フェーズ(基本設計〜監理)の担当範囲を明示する
建築設計の転職市場では、どのフェーズを担当できるかによって求人のマッチング精度が変わります。担当フェーズを明示することは採用担当者への配慮でもあります。
| フェーズ | 主な業務内容 |
|---|---|
| 企画・基本設計 | 建物の基本方針・平面計画・法規確認・コスト概算 |
| 実施設計 | 詳細図面・仕様書・確認申請図書作成・各種届出 |
| 工事監理 | 施工中の品質確認・是正指示・定例会議・竣工検査 |
採用担当者はここを見ている
- 「基本設計だけ」「実施設計だけ」は即戦力として使える範囲が限定される
- 基本設計〜工事監理まで一貫して担当できる人材は採用市場での評価が高い
- 工事監理の経験は、請負側での管理職候補としての評価指標になる
守秘義務がある案件はどこまで書けるか
守秘義務を理由にプロジェクト情報を一切書かない応募者がいますが、これは採用担当者にとって「何をしてきたか全くわからない人」という印象を与える大きなNGです。守秘義務の範囲を正しく理解し、書ける範囲で最大限情報を開示することが正しい対応です。
| 書いてよい情報 | 書くべきでない情報 |
|---|---|
| 物件の用途(病院・マンション等) | クライアント・施主の企業名(非公開プロジェクト) |
| 延床面積・階数・構造 | 内部の特殊仕様・機密に関わる詳細 |
| 担当フェーズ・役割 | 竣工前の未公開プロジェクト名 |
| 竣工年(公開済み物件) | — |
施主名や詳細仕様は伏せながら、「物件種別・規模・フェーズ・役割」は必ず記載してください。記載例として「病院施設(延床約5,000㎡・RC造5階)の基本設計〜実施設計を主担当(施主名・物件名は守秘義務のため非開示)」のように書くと、採用担当者への誠実な対応にもなります。
意匠・構造・設備別|自己PRの書き方と例文
建築設計といっても、意匠・構造・設備では強みのアピールポイントが大きく異なります。自分の専門性に合わせた自己PRを作成することが、採用担当者に「この人は自分の強みを正しく理解している」と思わせる鍵になります。
意匠設計担当者の自己PR例文
良い例文(意匠設計)
意匠設計事務所にて10年間、主に医療・福祉施設の基本設計から実施設計まで一貫して担当しました。高齢者・障がい者が利用する施設ならではのユニバーサルデザインへの理解を深め、行政との協議を主体的に進めた経験があります。AutoCAD・Revitを業務レベルで使用しており、施主向けプレゼン用3Dモデルの作成にも対応しています。より大規模なプロジェクトに携わりながら、設計の幅を広げたいと考えています。
意匠設計の自己PRでは、「どのジャンルの建物が得意か」「施主や行政との折衝経験があるか」「3Dプレゼンに対応できるか」を明示することが採用担当者に響きます。
構造設計担当者の自己PR例文
良い例文(構造設計)
建築構造設計事務所にて7年間、RC造・S造・木造の構造設計を担当しました。延床5,000㎡超の中規模建築を中心に、構造計算書作成・確認申請対応を主業務としており、意匠設計者や施工会社との調整を積極的に行ってきました。BUS-6・ETABSの使用経験があり、耐震診断業務にも携わっています。構造設計一級建築士の取得に向けて現在学習中です。
構造設計の自己PRでは、「対応できる構造種別(RC・S・木造等)」「使用する構造解析ソフト」「意匠設計者や施工会社との協力体制」を具体的に書けるかどうかで差がつきます。
設備設計担当者の自己PR例文
良い例文(設備設計)
設備設計事務所にて8年間、空調・衛生・電気設備の設計を担当しました。病院・ホテル・大型商業施設など用途が多様なプロジェクトに従事し、省エネ計算・ZEB認証対応の実務経験があります。CADWELLを主軸に、RevitMEPによるBIM連携設計にも対応しています。意匠・構造とのBIM協調経験を活かして、設計効率化と品質向上に貢献したいと考えています。
設備設計の自己PRでは、「担当設備の種類(空調・衛生・電気等)」「省エネ・ZEB等の最新対応経験」「BIM設計経験」が他の候補者との差別化ポイントになります。
採用担当者が即NGにする職務経歴書の書き方5選
どれだけ設計スキルがあっても、職務経歴書の書き方次第で書類選考を通過できないケースがあります。採用担当者から「この書き方では面接に呼べない」と言われるNG例を5つ紹介します。
NG①「マンション等の設計に従事」で物件情報が終わっている
「等」という一言でプロジェクトの詳細を省略するのは、最もよく見られるNGパターンです。採用担当者には「何をどのくらいやってきたか何もわからない」という印象を与えます。
NG例
マンション等の設計に従事。
改善例
集合住宅(RC造10〜15階建て・延床5,000〜12,000㎡)の実施設計を主担当として5件担当。確認申請業務・行政との事前協議も経験。
NG②「コミュニケーション力があります」だけで終わる自己PR
「コミュニケーション力に自信があります」は、全応募者の半数以上が書く表現です。根拠のない抽象的なアピールは採用担当者には響きません。
NG例
コミュニケーション力には自信があります。
改善例
施主・行政・施工会社の三者調整を主体的に担い、延床3,000㎡の複合施設プロジェクトで工期を2週間短縮した調整事例があります。
NG③CADスキルの記載が「AutoCAD使用可」だけ
「AutoCAD使用可」だけでは使用年数・習熟度・主な用途が何もわかりません。採用担当者は「業務レベルで使えるのか」を判断できないため、スキル欄としての機能を果たしていません。
NG例
AutoCAD使用可
改善例
AutoCAD(業務使用歴10年・実施設計図面作成が主軸)、Revit(3年・BIMモデル作成・施主プレゼン用3D活用)
NG④発注者側か請負側かで書き方を変えていない
発注者側(デベロッパー・官公庁・企業施設管理部門)と請負側(設計事務所・ゼネコン設計部)では、採用担当者が重視するポイントが異なります。同じ経歴でも、応募先に合わせて「どの経験を前面に出すか」を変えるだけで通過率が変わります。
| 応募先 | 重視されるポイント | 前面に出すべき経験 |
|---|---|---|
| 設計事務所・ゼネコン設計部(請負側) | 設計実績の規模・フェーズ・即戦力性 | プロジェクト実績・使用ソフト・資格 |
| デベロッパー・官公庁(発注者側) | プロジェクト管理力・折衝経験 | 折衝経験・工期・予算管理・複数案件対応 |
工事監理の経験を軸に施工管理へのキャリアチェンジを検討している場合は、施工管理の職務経歴書テンプレートを見比べておくと書き方のイメージがつかみやすくなります。
NG⑤守秘義務を理由にプロジェクト情報を一切書かない
守秘義務がある案件でも、「物件種別・延床面積・構造・担当フェーズ・役割」は一般的に記載可能です。
NG例
守秘義務があるため、プロジェクト詳細は記載できません。採用担当者には「何をしてきたか全くわからない」という印象を与え、場合によっては不信感を持たれるリスクもある。
改善例
○○用途(延床約○○㎡・○○造・○階建て)の基本設計を主担当として担当(施主名・物件名は守秘義務のため非開示)
スマホで最短3分!履歴書作成ツール【サクレキ】で今すぐ履歴書を作成
まとめ
- 職務経歴書はポートフォリオとは独立して評価される。書類選考では職務経歴書が先に読まれる
- プロジェクト実績は「物件種別・延床面積・構造・担当フェーズ・役割」の5点セットで表形式に整理する
- CAD・BIMスキルはソフト名・使用年数・主な用途を明記する
- 守秘義務がある案件も、物件種別・規模・フェーズ・役割は記載可能な範囲で必ず書く
- 応募先(請負側 vs 発注者側)に合わせて、前面に出す経験を変える
建築設計の職務経歴書は「設計の実力を言葉に変換する文書」です。具体的な数字と明確な役割の記述が、採用担当者に「この人に会いたい」と思わせる職務経歴書をつくります。職務経歴書とあわせて履歴書も準備する場合は、転職用の履歴書テンプレートを使うと準備がスムーズです。
建設業界全体で使えるフォーマットを確認したい場合は、建設業界の職務経歴書テンプレートもあわせて参考にしてください。

建築設計の職務経歴書に関するよくある質問
- 建築設計の職務経歴書はA4何枚が適切ですか?
-
A4用紙2〜3枚が一般的です。プロジェクト実績一覧を表形式で記載するため、2枚では足りないケースもあります。担当案件が多い場合は代表案件を3〜5件に絞り、「その他○件」とまとめて簡潔にすることをおすすめします。
- 一級建築士を持っていないと書類選考で不利になりますか?
-
応募先によって異なります。設計事務所や確認申請業務を主体とする企業では一級建築士が必須になることがありますが、ゼネコンのサブコン・ハウスメーカー・デベロッパーでは二級建築士や「受験予定」でも通過するケースが多くあります。受験予定がある場合は「○年度一級建築士受験予定」と明記して意欲を示しましょう。
- フリーランスや個人事務所での経歴はどう書けばいいですか?
-
「屋号(または個人事業主)として建築設計業務に従事」と明記し、担当プロジェクト一覧を通常と同様に記載します。クライアント名を出せない場合は「病院施設(延床約4,000㎡・RC造4階)の実施設計を主担当として担当」のように物件概要で代替してください。
- 転職理由を職務経歴書に書く必要がありますか?
-
必須ではありませんが、自己PRの最後に一言添えると採用担当者に好印象を与えることが多いです。「より大規模なプロジェクトに携わるため」「BIM設計の環境が整った企業で専門性を高めるため」のように、前向きな転職理由を簡潔に添えることをおすすめします。

