法務の職務経歴書は、担当業務の種類・件数・役割を具体的な数字で示すことが最も重要です。契約書の審査や交渉の経験があっても、抽象的な表現では採用担当者に実務のレベル感が伝わりません。採用担当者が実際に評価する書き方のポイントと、機密情報を守りながら実績を伝える例文を紹介します。
法務の職務経歴書の書き方と例文【結論】
結論:担当業務の「種類・件数・役割」を数字で示す
法務は専門性が高い職種であるぶん、採用担当者は法律の専門家でないことも珍しくありません。書類選考の30秒で伝わるかどうかを分けるのは、専門用語の量ではなく「何を・どれくらいの規模で・どんな役割で」担当したかが数字で見えるかどうかです。契約書の種類や月間の審査件数、交渉やドラフト作成まで担当したかといった情報を職務要約と職務経歴の両方に落とし込むことが、通過率を上げる最短ルートになります。
良い例文(職務要約)
良い例文
上場メーカー(連結売上800億円)の法務部にて8年間、契約書審査・コンプライアンス推進・M&A対応を担当。年間契約書レビュー約400件(英文20%)、法務部5名体制でのリーダー職を2年経験。海外サプライヤーとの英文契約交渉にも対応可能です。
NG例
NG例
「法務業務全般に精通しており、様々な契約書の審査・作成を行ってきました。」「全般」「様々」という言葉だけでは、件数も難易度も伝わりません。
採用担当者はここを見ている
- 月間・年間の契約書レビュー件数と英文比率
- 審査のみか、交渉・ドラフト作成まで担当していたか
- 所属法務部の人数と、そのなかでの自分の役割
採用担当者が法務の職務経歴書で最初に確認する3つのポイント
結論の例文を土台にしながら、採用担当者が具体的にどこを見ているのかを3つの視点から掘り下げます。この3点を押さえるだけで、書くべき内容の優先順位がはっきりします。
①担当業務の「種類」と「件数」が数字で見えるか
「契約書審査を担当しました」という記載だけでは、月に5件なのか300件なのか判断できません。取り扱った契約書の種類(業務委託・秘密保持・売買・ライセンス・M&A関連など)と件数をセットで書くことで、業務ボリュームが具体的に伝わります。
②法務部内での立ち位置と裁量が伝わるか
同じ「法務担当」でも、100人規模の法務部の一担当者と、部員3名の中で事実上のリーダーを務めていたのでは、求められるスキルがまったく異なります。所属部門の規模と自分の役割をセットで書くことで、採用担当者は入社後にどんな業務を任せられるかを具体的にイメージできます。「法務部(部員5名、うち弁護士資格者1名)にて契約書審査を主管」のように、部門構成と役割を1文にまとめると伝わりやすくなります。
③「守り」と「攻め」どちらの法務経験か判断できるか
法務の業務は大きく2種類に分かれます。どちらの経験が深いかを職務経歴書の冒頭で示すと、応募先の求人とのマッチ度を採用担当者が判断しやすくなります。
| 守りの法務 | 攻めの法務 |
|---|---|
| 契約書審査・管理、訴訟対応、コンプライアンス推進、社内規程整備 | M&A法務、新規事業の法的検討、知的財産戦略、海外法務・渉外業務 |
職務経歴書の基本構成と項目別の書き方
法務の職務経歴書は「職務要約→職務経歴詳細→資格・語学力→自己PR」の順が標準的な構成です。基本フォーマットに迷う場合は、経理の職務経歴書テンプレートのような他の専門職種のフォーマットも参考になります。ここでは項目ごとの書き方を解説します。
職務要約(冒頭サマリー)の書き方
採用担当者が最初に読む箇所です。200〜300文字を目安に「業種・会社規模・在籍年数・業務の核心・強み」を凝縮して書きます。結論のセクションで紹介した良い例文のように、件数と役割をセットで入れることが要約の完成度を左右します。
職務経歴詳細の書き方
会社ごと・在籍期間ごとに事業内容と業務内容を記載します。複数社経験がある場合は逆年代順(新しい順)が原則です。
- 会社情報:業種・売上規模・従業員数・上場区分を1〜2行で記載する
- 所属部署:「法務部(部員〇名)」と部門規模を添える
- 役職・役割:担当・リーダー・マネージャーなど、在籍中の役割変化を時系列で示す
- 業務内容:業務カテゴリ別に分けて箇条書きで記載する
業務内容欄の書き方(業務カテゴリ別)
法務業務を「契約書関連」「コンプライアンス」「訴訟・紛争対応」「M&A・コーポレート」の4カテゴリに分けて記載すると、採用担当者がスキルセットを把握しやすくなります。
| 業務カテゴリ | 記載すべき内容 |
|---|---|
| 契約書関連 | 契約書の種類(業務委託・NDA・売買・ライセンス等)、月間件数、英文割合、審査のみかドラフト作成まで担当したか |
| コンプライアンス | 社内研修の実施回数・対象人数、規程整備の件数・対象法令 |
| 訴訟・紛争対応 | 担当件数、弁護士との折衝の有無、解決実績 |
| M&A・コーポレート | 関与したプロジェクト数、役割、案件規模の概算 |
資格・語学力の書き方
法務職で評価される主な資格と記載のポイントは次のとおりです。ビジネス実務法務検定は履歴書に何級から書く?正式名称と記載例も参考になります。

- ビジネス実務法務検定:2級以上が実務力の目安。3級も取得済みであれば記載してよい
- 司法書士・行政書士・宅地建物取引士:正式名称と取得年月(西暦)を記載
- TOEICスコア:英文契約書の実務経験とセットで記載する(スコアのみは「ペーパー英語力」と見なされるリスクがある)
- 法学部・法科大学院の学歴:資格欄ではなく自己PR欄で関連スキルとして触れる
職務経歴書のフォーマット自体を効率よく整えたい場合は、人事の職務経歴書テンプレートのような専門職向けフォーマットの構成も参考にすると、項目の抜け漏れを防げます。
自己PRの書き方
自己PRは「法務としてのスタンス+具体的なエピソード+転職先での再現性」の3段構成で書くと採用担当者に響きやすくなります。
良い例文(自己PR)
事業部門と二人三脚で動く「攻めの法務」を強みとしています。新規事業チームに常駐し、契約書審査だけでなくビジネスモデルの法的リスク検討を初期段階から担当。審査依頼から回答まで平均3営業日以内での対応を定着させ、事業部から評価を得ました。英文契約書の年間対応実績は80件です。
採用担当者が落とすNG例と通過する例文
基本構成が整っていても、記載の粒度が粗いと選考で落とされます。よくある2つの失敗パターンを、改善した例文とセットで確認しましょう。
「携わりました」止まりの記載
NG例
「M&Aプロジェクトに携わった経験があります。」主体的に関与したのか周辺業務だったのかが不明で、実力が伝わりません。
良い例文
「国内メーカーのM&A(中規模案件)において法務主担当として関与。対象会社のデューデリジェンス(契約書・係争リスク確認)を主管し、外部顧問弁護士との連携窓口を担当。SPA(株式譲渡契約)のドラフトレビューにも参加。」
機密を理由に実績を書かない記載
NG例
「守秘義務の関係で業務内容の詳細は記載できません。」実績が何も伝わらない書類は評価のしようがありません。
良い例文
「某上場IT企業(売上500億円規模)との提携契約(守秘義務につき社名は非開示)において、自社側の法務担当として契約条件交渉から最終合意まで主管。準拠法・紛争解決条項を自社有利に調整した実績があります。」
職務経歴書のフォーマット自体に不安がある場合は、事務の職務経歴書テンプレートのような項目立てを参考に、自分の情報を当てはめてみると書きやすくなります。
法務職ならではの機密情報の扱い方
法務は業務の性質上、外部に開示しにくい情報を多く扱います。「どこまで書けるのか」という問いに、採用担当者の視点から答えます。
具体的な企業名・案件名は書かなくてよい
取引先の社名、M&Aの対象会社名、訴訟相手の名称などは記載不要です。「某上場企業」「国内中堅メーカー(製造業)」のように業種・規模で表現すれば、採用担当者は実務感を十分に把握できます。「守秘義務につき社名は非開示」と明記すること自体が、機密管理を徹底できる人材だという評価につながります。
機密のなかでも書ける3つの要素
守秘義務があっても、以下の3要素は抽象化して書けます。これらを外すと実績がゼロの書類になるため、必ず含めてください。
- 自分の役割:主担当・サポート・外部弁護士の指揮・窓口担当など、プロジェクト内での立ち位置
- 業務の規模感:「買収額非開示・中規模案件」「売上500億円規模の取引先との契約」など、相手先を特定しない規模感
- 業務の成果・貢献:「条件交渉で自社有利な修正を3点獲得」「審査回転率を平均2営業日短縮」など、行動と結果を結ぶ記述
コンプライアンス業務や内部統制の経験がある場合は、監査・内部統制の職務経歴書|J-SOX実務を伝える書き方も参考になります。

転職先別(大手企業・スタートアップ・法律事務所)の書き方の違い
法務職の転職先は大きく「大手企業の法務部門」「スタートアップ・ベンチャー」「法律事務所(パラリーガル)」の3つに分かれます。採用担当者が期待するスキルセットが異なるため、見せ方も変える必要があります。
大手企業・上場企業の法務部門へ転職する場合
大手企業が重視するのは「専門性の深さ」と「実績の規模」です。契約書の件数・種類、M&Aやコーポレート法務の経験、弁護士との協働実績を前面に出す構成が有効です。
採用担当者はここを見ている
- 英文契約書への対応実績(グローバル展開している企業ほど重要)
- 社内規程・ガバナンス整備の経験と規模(対象法令・改訂件数)
- 法務部内でのマネジメント経験(係長・課長相当の経験年数)
スタートアップ・ベンチャーの法務部へ転職する場合
スタートアップが求めるのは「一人でなんでもできる守備範囲の広さ」と「スピード感」です。専門特化よりも、業務の多様性と対応スピードをアピールする書き方が効果的です。
- 一人法務・少人数法務での経験は強力なアピールポイントになる
- 契約書審査だけでなく、法務以外の業務(総務・HR等)にも対応した経験があれば明記する
- 事業部門との協働姿勢・ビジネス視点での法務判断の事例を具体的に書く
法律事務所(パラリーガル)へ転職する場合
法律事務所では「クライアント対応のプロフェッショナリズム」と「事務処理の正確性・スピード」が最重視されます。
- 訴訟・仲裁の補助業務(書面作成・証拠整理・期日管理)の経験を具体的に記載する
- 弁護士との業務分担の実績(どこまで自分で判断・処理していたか)を明示する
- 語学力(英語・中国語等)があれば外資系事務所への応募で強みになる
完成した書類に不安が残る場合は、職務経歴書の添削はどこがいい?失敗しない選び方を参考に、無料の転職エージェント添削から試してみてください。

まとめ
- 法務の職務経歴書は「担当業務の種類・件数・規模・役割」を具体的な数字で書くことが最優先
- 採用担当者が落とすのは「担当しました」「携わりました」で止まる曖昧な記載
- 機密情報は企業名・案件名を伏せながら「役割・規模感・成果」の3要素で代替できる
- 転職先(大手企業・スタートアップ・法律事務所)ごとにアピールポイントを変えると通過率が上がる
法務のスキルは高くても、書き方次第で書類選考の段階で埋もれてしまいます。数字と役割を丁寧に記載することが、選考通過への直接の近道です。
法務の職務経歴書に関するよくある質問
- 法務の職務経歴書は何枚が適切ですか?
-
A4用紙2枚が基本です。1枚だと法務業務の詳細が書ききれず、3枚以上だと読まれない可能性が高くなります。複数社経験がある場合でも2枚以内にまとめるのが原則ですが、経験が20年以上ある場合は最大3枚まで許容されることがあります。
- 弁護士資格がなくても法務職に転職できますか?
-
企業法務の多くは弁護士資格を必須としていません。実務経験(契約書件数・業務種別)と問題解決力が評価の中心です。ただし、高度なM&A法務や訴訟対応の主担当を求めるポジションでは、弁護士資格が加点要素になる場合があります。ビジネス実務法務検定2級以上を保有していると、実務力のシグナルとして有効です。
- 法務の職務経歴書に英語力はどう記載すればいいですか?
-
TOEICスコアを記載する場合は「TOEIC860点(英文契約書の審査・交渉実務経験あり)」のように、実務での使用経験とセットで書くことを推奨します。スコアのみの記載は「ペーパー英語力」と判断されるリスクがあります。英文契約書の年間件数や相手方の国・言語を添えるとより説得力が増します。
- 異業種から法務職へ転職する場合、職務経歴書はどう書けばいいですか?
-
金融・製薬・IT・製造など業種によって頻出する契約書の種類や規制法令が異なるため、前職の業種で培った専門知識と、転職先の業種への親和性を自己PR欄に書くと効果的です。契約書審査や社内規程整備など、法務の基礎スキルは業種を問わず評価されます。

