辞表とは、役員や公務員など雇用契約ではなく委任・任命関係にある人が使う退職の申し出文書で、一般の会社員が提出すべき書類は「退職届」です。「辞表」という言葉を安易に使うと、社会人としての基礎知識を疑われることもあります。この記事では辞表の意味・語源から、退職届・退職願との違い、間違えて使ってしまったときの対処法まで解説します。
辞表の意味とは
結論:辞表は役員・公務員が使う退職願の一種
辞表とは、取締役や執行役員などの役員、あるいは公務員が、自身の役職や任命された地位を辞退する意思を伝えるために提出する文書です。一般企業の従業員が雇用契約を終了させる場合に使う書類とは法的な位置づけが異なります。
- 辞表:役員・公務員が「役職」を辞退するときに使う
- 退職願:一般社員が退職の意思を「お伺い」として伝える書類
- 退職届:一般社員が退職を「通知」する書類(撤回不可)
辞表の語源・辞書的な定義
国語辞典では、辞表は「職を辞めたい旨を書いて出す文書」「辞職の際、その旨を書いて差し出す文書」と定義されています。もともとは平安・鎌倉時代に摂政や関白、大臣といった官職を辞退する際に朝廷へ差し出した公式文書に由来する言葉で、現代でもその名残から「地位や役職を辞する」というニュアンスが強く残っています。
一般社員が「辞表」と言うとどうなるか
一般社員が退職の意思を伝える際に「辞表を提出します」と言ってしまうケースは少なくありません。間違いではあるものの、意味は通じるため大きな問題になることは稀です。ただし、正式な提出書類の表題に「辞表」と書いてしまうと、人事担当者から書類の差し替えを求められることがあります。
NG例
一般社員が退職届の表題に「辞表」と記載してしまう。役職に就いていない人が使う言葉ではないため、人事から「退職届」への書き直しを求められる可能性があります。
良い例
一般社員が退職の意思を伝えるときは「退職届を提出します」「退職願をお渡ししたいのですが」と伝える。自分の雇用形態に合った言葉を選ぶことで、余計な訂正のやり取りを避けられます。
辞表・退職願・退職届の違い
3つの書類の対象者と法的効力の違い
| 書類名 | 提出する人 | 法的な性質 | 撤回できるか |
|---|---|---|---|
| 辞表 | 役員・公務員 | 委任契約の解除・任命の辞退 | 原則不可 |
| 退職願 | 一般社員 | 退職の「お願い」(合意解約の申し込み) | 会社が承諾するまでは可能 |
| 退職届 | 一般社員 | 退職の「通知」(一方的な意思表示) | 原則不可 |
自分がどれを提出すべきか
提出すべき書類は、自分の立場によって決まります。
- 取締役・執行役員・公務員である場合は辞表
- 一般社員で、まず退職の意向を相談したい場合は退職願
- 一般社員で、退職がすでに承認・確定している場合は退職届
なぜ「辞表」という言葉は誤解されやすいのか
「辞表を叩きつける」という表現とのギャップ
ドラマや漫画では、上司と対立した主人公が「辞表を叩きつける」場面がよく描かれます。この強いイメージのせいで、辞表は「怒りや対決の意思を示す言葉」だと誤解されがちです。しかし実際のビジネスシーンでは、辞表はあくまで役職を辞退するための正式な事務文書であり、感情的な意思表示の道具ではありません。
採用担当者はここを見ている
採用担当者はここを見ている
- 退職や転職の場面で使う言葉を正しく選べているか
- 感情的な表現に頼らず、事務手続きとして冷静に対応できているか
- 前職の退職理由や経緯を、面接で落ち着いて説明できるか
転職活動中の面接では、前職の退職経緯を聞かれることも珍しくありません。言葉の使い分けだけでなく、退職に至った説明の仕方も評価の対象になります。
辞表という言葉を使う場面・使用例
役員・取締役が辞表を提出するケース
良い例文
「私儀 この度一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって取締役を辞任いたしたく、ここに辞表を提出いたします」
取締役や執行役員は、会社と雇用契約ではなく委任契約を結んでいます。そのため役職を辞めるときは「退職」ではなく「辞任」という言葉を使い、その意思を示す文書として辞表を提出します。
公務員が辞職願を提出するケース
公務員の場合、任命権者に対して身分を辞する意思を伝える文書は「辞職願」と呼ばれるのが一般的です。「辞表」という言葉が使われることもありますが、実務上は辞職願として扱われるケースが多く、提出先の自治体や省庁の様式に従う必要があります。
一般社員が「退職届」と言い換えるべきケース
NG例
一般社員が上司に「辞表を書いてきました」と伝える。正しくは「退職届」であり、言葉の選び方だけで基礎知識を疑われてしまいます。
辞表という言葉を間違えて使ってしまったときの対処法
上司や人事に指摘された場合の切り返し方
「辞表」と言ってしまい、上司や人事から「退職届のことですね」と指摘されても、慌てる必要はありません。「失礼しました、退職届のことです」と一言添えて訂正すれば問題ありません。多くの場合、言葉の間違い自体が評価に影響することはなく、その後の対応の落ち着きの方が重視されます。
提出書類を「退職届」に差し替える際の伝え方例文
良い例文
「先ほど辞表とお伝えしましたが、正しくは退職届です。書き直して改めて提出させていただきます」


退職後のステップ|転職準備も並行して進める
退職の意思を正しく伝えたあとは、円満に退職手続きを進めながら、次の転職活動の準備も並行して進めておくとスムーズです。応募書類の中でも履歴書は早めに準備しておきたい書類のひとつです。
転職活動をこれから始める方は、転職用の履歴書テンプレートを使うと、必要な項目をもれなく整理できます。
応募先によっては指定の様式を求められることもあるため、厚生労働省の規格に沿った履歴書テンプレートも事前に確認しておくと安心です。
企業によってはJIS規格の様式を指定される場合もあるため、JIS規格に沿った履歴書テンプレートも併せて用意しておくとよいでしょう。
まとめ
- 辞表は役員・公務員が役職を辞退するときに使う文書
- 一般社員が退職するときに提出すべきは「退職届」または「退職願」
- 言葉を間違えても慌てず、正しい書類名に訂正すれば問題ない

辞表の意味に関するよくある質問
- 辞表と退職届はどちらが正式な言葉ですか?
-
どちらも正式な文書名ですが、対象者が異なります。辞表は役員や公務員が役職を辞退する際に使う言葉で、一般社員が退職するときに提出する正式な文書は退職届です。
- 一般社員が辞表と言ってしまった場合、内定や評価に影響しますか?
-
言葉の間違い自体が評価に大きく影響することは基本的にありません。訂正を求められた際に落ち着いて対応できれば問題ないケースがほとんどです。
- アルバイトやパートも辞表を使いますか?
-
アルバイトやパートも雇用契約に基づく働き方のため、辞表ではなく退職届を使うのが一般的です。就業規則に記載の様式や提出先を確認しておくと安心です。

