経理は決算業務の範囲と精度、財務は資金管理の規模と成果を軸に書くのが正解です。同じ「経理財務」という括りでも評価されるポイントは異なるのに、ネット上のテンプレートの多くは経理視点に偏っています。この記事では経理・財務それぞれのサンプルと、採用担当者が実際に見ている判断基準をあわせて解説します。
経理・財務の職務経歴書サンプル|結論と基本の型
結論:経理と財務では「書くべき実績」が違う
経理は「どこまで正確に、どの範囲の決算を担当したか」が評価軸になります。一方で財務は「いくらの資金を、どう調達・運用し、会社にどんな効果をもたらしたか」という金額規模と成果が評価軸です。同じ経理財務部にいても、担当業務が決算寄りか資金管理寄りかでサンプルの選び方を変える必要があります。
経理・財務を兼任していた場合は、両方の実績を書いて構いません。ただし応募先の求人が「経理」「財務」のどちらを募集しているかを確認し、比重を合わせて書くことが通過率を左右します。
経理の職務要約サンプル
経理の職務要約では、決算の担当範囲・使用システム・会社規模の3点を冒頭で明示します。「月次決算を経験」だけでは、他の応募者との差がつきません。
良い例文(経理)
小売業上場企業の経理部に7年間勤務。月次・年次決算を4名体制で担当し、うち3年間は連結子会社5社の財務諸表取りまとめを担当しました。会計システムはSAP(S/4HANA・FI/COモジュール)を使用。日商簿記2級・TOEIC720点保有。より複雑な連結・開示業務に携わることを目的に転職活動を行っています。
NG例(経理)
経理業務を7年間担当してきました。月次決算・年次決算などを経験しています。ExcelやWord、会計ソフトの操作が可能です。「規模感」「担当範囲」「使用システム」の3点がすべて不明瞭なため、採用担当者の目に止まりません。
書き方の骨組みに迷ったら、経理の職務経歴書テンプレートを土台にして、自分の実績を当てはめていくと整理しやすくなります。
財務の職務要約サンプル
財務は決算ではなく資金の動きが中心です。調達額・借入残高・折衝相手・改善効果を数字で示すことが職務要約の核になります。「銀行対応をしていた」だけでは経理のNG例と同じ失敗になります。
良い例文(財務)
製造業(売上高300億円規模)の財務部に5年間勤務。日次の資金繰り管理と短期借入の実行判断を担当し、メインバンク3行との折衝を主導しました。運転資金の調達条件を見直し、年間の支払利息を約800万円削減した実績があります。財務モデルの構築にはExcel・Power BIを使用。日商簿記2級・証券アナリスト1次保有。より大きな資金調達案件に携わるため転職活動を行っています。
NG例(財務)
財務部で資金管理を担当していました。銀行対応や資金繰り表の作成を行い、正確な業務を心がけてきました。金額規模・借入残高・折衝相手・成果が一切書かれておらず、経理のNG例とまったく同じ「量が伝わらない」失敗をしています。
経理・財務兼任(中小企業)のサンプル
中小企業では経理と財務を1人で兼任するケースが多くあります。この場合は、経理業務と財務業務を分けて記載し、どちらにどれくらいの時間を使っていたかが伝わるようにします。
良い例文(経理財務兼任)
社員50名規模の製造業にて、経理財務業務を2名体制で担当(2019年〜現在)。
- 経理:月次・年次決算、仕訳入力、税務申告補助(顧問税理士連携)
- 財務:月次の資金繰り表作成、短期資金の調達判断、取引銀行2行との折衝
兼任の経験は「経営に近い立場で数字を見てきた」という強みになります。応募先が経理・財務のどちらを主軸に募集しているかで、記載する順番を入れ替えると通過率が上がります。
採用担当者は経理と財務のどこを見分けているか
経理と財務は求められる資質が異なるため、採用担当者が書類を見るときの着眼点も変わります。応募するポジションに合わせて、強調する実績を選びましょう。
採用担当者はここを見ている
- 経理職:決算業務の経験範囲、使用会計システム、担当していた会社の規模
- 財務職:資金調達・運用の金額規模、銀行や証券会社との折衝経験、改善によるコスト削減効果
- 経理財務兼任:職務要約の一文目でどちらの比重が大きいかが明確になっているか
採用担当者は複数枚の書類を短時間で確認します。経理と財務を混同した表現(「決算業務と資金調達を幅広く担当」のような曖昧な一文)は、どちらの専門性も伝わらず埋もれる原因になります。
職務経歴の書き方|決算業務(経理)と資金管理(財務)で差がつく
職務経歴セクションは、書類選考において最も採否を左右する部分です。「決算業務を担当」「資金管理を担当」の一言では、採用担当者は業務内容を具体的に想像できません。
経理の決算業務・日常業務の書き方サンプル
決算業務を記載するときは、業務の「種類」と「自分が担当した範囲」を明示します。監査法人対応や申告書作成補助まで関わっている場合は、それも明記することで経験の深さが伝わります。
良い例文:決算業務の記載サンプル
【月次決算業務】
- 仕訳入力(経費精算・固定資産・前払費用・売上計上処理)
- 試算表の作成・差異分析(前月比・予算比・前年同期比)
- 月次レポートの作成・経営会議向け資料整備
【年次決算業務】
- 決算整理仕訳(未払費用・前受収益・引当金繰入・棚卸資産評価)
- 法人税申告のための税務調整(社内・税理士法人との連携)
- 監査法人対応(証憑書類の整備・確認状の発送・質疑応答)
NG例
月次決算、年次決算を担当。「その他経理全般の業務を幅広く経験」という記載は、採用担当者には何も伝わりません。
財務の資金繰り・資金調達の書き方サンプル
財務業務は「資金繰り管理」「資金調達」「資金運用」の3つに分けて記載すると、担当範囲が伝わりやすくなります。調達手法・金額・交渉相手を具体的に書くことが、経理との最大の違いです。
良い例文:資金繰り・資金調達の記載サンプル
【資金繰り管理】
- 日次・月次の資金繰り表作成(3ヶ月先までの資金予測を管理)
- 短期借入の実行判断(当座貸越枠5億円の運用管理)
【資金調達】
- シンジケートローン(総額20億円)の組成に主担当として関与
- メインバンク3行・地方銀行2行との金利交渉を主導
- 私募債の発行手続き(発行額5億円)をサポート
NG例
資金調達や銀行対応を担当していました。調達額・調達手法・交渉相手が不明で、「どの規模の資金を動かせる人材か」が採用担当者に伝わりません。
担当範囲を一覧表で整理する
複数年・複数社の経験がある場合は、担当業務を一覧表にまとめると採用担当者が経験の全体像を把握しやすくなります。経理と財務は分けて整理しましょう。
| 区分 | 担当業務 | 経験年数 |
|---|---|---|
| 経理:月次決算 | 仕訳・試算表・差異分析・経営レポート | 7年 |
| 経理:年次決算 | 整理仕訳・税務申告補助・監査対応 | 5年 |
| 財務:資金繰り | 資金繰り表作成・短期借入判断 | 4年 |
| 財務:資金調達 | シンジケートローン・私募債・銀行折衝 | 3年 |
| 財務:IR対応 | 決算説明資料の作成補助 | 2年 |
この表があると、採用担当者は「決算経験7年・資金調達経験3年」という情報をひと目で確認できます。長文で説明するよりも、視認性の高い表形式の方が選考の場では有利に働きます。
会計システム・財務ツールの書き方
会計・財務システムの記載は、採用担当者が入社後の即戦力を判断する重要な要素です。システム名だけでなく、使用したモジュールや用途、使用年数まで明記することで説得力が増します。
会計システム別の記載例(経理)
会計システム別の記載例
- SAP ERP:SAP S/4HANA(FI・COモジュール)使用歴4年 / 月次締め・原価計算に使用
- 弥生会計:弥生会計 プロフェッショナル 使用歴5年 / 仕訳・月次締め・決算整理に使用
- 勘定奉行:勘定奉行クラウド(仕訳入力・月次締め・振替伝票)使用歴3年
- freee会計:freee会計(仕訳・銀行明細連携・月次レポート作成)使用歴2年
財務ツール・資金繰り管理の記載例
財務は会計システムよりも、資金繰り管理ツールや財務モデリングのスキルが重視されます。どの用途でどのツールを使っていたかを具体的に書きましょう。
財務ツールの記載例
- 資金繰り表:Excelで日次・月次の資金繰り表を独自に構築・運用
- 財務モデリング:Excel・Power BIを用いた資金計画のシミュレーション作成
- 金融機関とのやり取り:シンジケートローン管理システム、当座貸越枠の実行管理
採用担当者はここを見ている
- システム名だけ書いてモジュール不明 → 「どの程度使えるかわからない」
- 財務なのに「Excelが使えます」だけの記載 → 資金計画の構築力が伝わらない
- 使用年数が短い(半年未満)→ 「基本操作だけの可能性が高い」と判断される
Excel・財務分析スキルの書き方
「Excel中級・上級者」という表現は採用担当者には何も伝わりません。関数・機能の名前を具体的に列挙し、業務での使用場面とセットで記載するのが正解です。
良い例文:Excel・財務分析スキルの記載サンプル
- Excel:VLOOKUP・INDEX/MATCH・SUMIFS・ピボットテーブルを用いた月次レポート作成
- Excel VBA:経費精算データの自動集計マクロを作成・運用(月次処理時間を3時間→1時間に削減)
- 財務分析:損益分岐点分析・キャッシュフロー予測モデルの作成
VBAや財務モデリングなど、業務の再現性を示せるスキルがある場合は必ず記載します。経理財務部門のDX化ニーズが高まっている現在、職務経歴書の自動作成ツールを使って効率的に書類作成することも一つの方法です。

自己PRの書き方と経験年数別サンプル
自己PRは職務経歴書の中で最も差がつくセクションです。「正確性」「コミュニケーション力」といった抽象的な表現では採用担当者の印象に残りません。具体的な経験と数値を組み合わせて、「この人が来たら何ができるか」が伝わる文章にします。
採用担当者はここを見ている
- 「この人が来たら何ができるか」が具体的に想像できるか
- 経理なら「スピード」「正確性」「改善力」、財務なら「交渉力」「資金計画力」が具体的なエピソードで示されているか
- 転職理由と今後のキャリア目標が一致しているか(「スキルアップのため」だけでは弱い)
経験年数別・職種別の自己PR例文
経理:経験3年前後の自己PR例文
月次・年次決算を中心に3年間経験を積んできました。差異分析の資料作成では、部門別の変動要因を視覚化したレポートフォーマットを独自に整備し、経営会議の準備時間を従来比30分短縮しました。日商簿記2級の取得後は仕訳の判断精度が上がり、次のステップとして連結決算に携わりたいと考えています。
財務:経験5年前後の自己PR例文
資金繰り管理と短期借入の実行判断を5年間担当してきました。メインバンクとの金利交渉を主導し、調達コストを年間800万円削減した実績があります。資金計画をExcel・Power BIでモデル化し、経営層への報告資料も自ら作成してきました。より大きな資金調達案件に携わるため、上場企業の財務部への転職を希望しています。
NG例:こんな自己PRは読み飛ばされる
経理財務業務に真摯に取り組み、常に正確な処理を心がけてきました。「正確」「真摯」「誠実」という表現は応募者のほぼ全員が書く言葉です。具体的な数値・システム・エピソードに置き換えましょう。
経理の自己PRをさらに深掘りしたい場合は、経理の職務経歴書 自己PR例文10選もあわせて参考にしてください。

会社規模・経験レベル別の注意点
職務経歴書は、在籍していた会社の規模によって「何を強調するか」が変わります。中小・ベンチャー経験者と上場企業経験者では、アピールすべきポイントが異なります。
中小企業・ベンチャー(経理財務兼任)の書き方
中小企業やベンチャー企業での経理財務経験は「守備範囲の広さ」が最大の強みです。人数が少ない分、一人でこなしてきた業務の多さを具体的に伝えることが重要です。経理・財務に加えて事務作業全般を幅広く担当していた場合は、事務の職務経歴書テンプレートの項目立ても参考にすると記載漏れを防げます。
1名〜2名体制での経理財務経験は、「業務の優先順位を自分で判断できる」「資金繰りから決算まで全体のフローを把握している」という評価につながります。大手企業に転職する場合も武器になります。
上場企業・大手の経理財務職務経歴書
上場企業経験者は、担当したセクションの「深さ」と「専門業務の経験」が差別化ポイントです。「大手企業の経理財務部にいた」という事実よりも、「その中で何を担当し、どの程度の責任を持っていたか」が問われます。
採用担当者はここを見ている
- 経理:「有価証券報告書の作成に携わった」→ 補助担当か主担当かで大きく評価が変わる
- 経理:IFRS・US-GAAPの対応経験があれば必ず記載(外資系・上場企業では高評価)
- 財務:シンジケートローンの主幹事対応、格付機関への説明対応の経験は明記する
- 財務:IR資料作成に補助として関わったか、投資家対応まで担ったかを区別する
書き方に自信がない場合や、自分では気づかない強みを引き出したい場合は、職務経歴書の有料添削サービスを活用する方法もあります。経理財務専門のキャリアアドバイザーによる添削は、自分の経験の棚卸しにも役立ちます。ハローワーク経由での応募を考えている場合は、ハローワーク用の職務経歴書テンプレートの書式もあわせて確認しておくと安心です。

経理・財務で書類が通らない人によくある失敗
経理・財務の職務経歴書で書類選考を通過できない人には、共通するパターンがあります。「業務経験があること」と「それが書類で伝わること」は別物だと理解しておきましょう。
| よくある失敗 | 採用担当者からどう見えるか |
|---|---|
| 経理と財務の表現を混同する | 「決算業務と資金調達を幅広く担当」だけでは、どちらの専門性も判断できない |
| テンプレートをそのまま流用する | 会社名と数字だけ差し替えた文章は、他の応募者と区別がつかない |
| 財務なのに決算の話ばかり書く | 資金繰り・調達の実績が埋もれ、財務の専門性が伝わらない |
| 兼任経験をどちらも中途半端に書く | 経理・財務どちらの求人にも「決め手に欠ける」印象を与える |
特に多いのが、応募先の求人が「財務」であるにもかかわらず、経理のサンプルをそのまま流用してしまうケースです。求人票に書かれている業務内容と、自分の職務要約の一文目が対応しているかを提出前に必ず確認しましょう。
まとめ
- 経理の職務経歴書は「決算業務の範囲」「使用システム」「会社規模」の3点を冒頭で明示する
- 財務の職務経歴書は「資金の金額規模」「調達手法」「折衝相手」「改善効果」を数字で示す
- 経理・財務を兼任していた場合は、比重を分けて記載し応募先の求人内容に合わせる
- 自己PRは「抽象的な美徳」ではなく「具体的なエピソード+数値+次のキャリア目標」で構成する
- テンプレートの丸写しは避け、自分の経験を数字とエピソードで肉づけする
経理・財務の職務経歴書で差がつくのは、業務の羅列の長さではなく、採用担当者が「この人なら自社の数字を任せられる」と想像できる具体性です。
経理・財務の職務経歴書に関するよくある質問
- 経理と財務、どちらの書き方で職務経歴書を書けばいいですか?
-
応募先の求人票に書かれている業務内容を基準に決めます。「決算」「仕訳」「税務申告」が中心なら経理の書き方、「資金調達」「資金繰り」「銀行折衝」が中心なら財務の書き方を選びましょう。両方を担当していた場合は、求人内容に近い方を職務要約の一文目に持ってきて、もう一方は補足として記載すると伝わりやすくなります。
- 経理・財務の職務経歴書はA4何枚にすべきですか?
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A4用紙1〜2枚が目安です。経験年数が5年以上あったり、複数の業務領域(決算・連結・資金調達など)を担当してきた場合は2枚になっても問題ありません。3枚以上になる場合は情報を絞り、応募先の求人に近い実績を優先して記載しましょう。
- 財務専任で会計システムの使用経験がほとんどない場合、どう書けばよいですか?
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会計システムの経験がなくても、資金繰り表の作成や財務モデリングの実績があれば問題ありません。「Excelで資金繰り表を独自に構築した」「Power BIで資金計画をモデル化した」など、数値管理への理解を示す内容が代替になります。会計システムは入社後に習得できる点を前向きに伝えましょう。
- 経理・財務ともに簿記2級しか資格がない場合、資格欄は不利になりますか?
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資格の数が少ないこと自体は不利ではありません。日商簿記2級は経理実務への理解を示す基準として多くの採用担当者が参照します。財務職の場合は証券アナリストやFP資格が評価材料になりますが、資格の有無より「どの規模の資金・決算を担当してきたか」の方が採否に直結します。
- 経理事務と経理職、財務専任職では職務経歴書の書き方が違いますか?
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基本的な構成は同じですが、強調するポイントが異なります。経理事務は「処理件数・スピード・正確性」、経理職(専任)は「決算業務の担当範囲・会計基準への理解」、財務専任職は「資金の金額規模・調達手法・折衝力」が評価軸になります。応募先のポジションに合わせて、記載の比重を変えるとよいでしょう。

