辞表は、取締役や執行役員、公務員など雇用契約ではなく委任・任命に基づく立場の人が使う書類です。一般の会社員が退職する場合は、辞表ではなく退職届または退職願を提出するのが正しい手続きです。この記事では辞表の正しい書き方と例文、退職届と混同されやすい理由を人事目線で解説します。
辞表の書き方と例文【結論】
結論:辞表は取締役・執行役員・公務員が使う書類
辞表を提出できるのは、会社と雇用契約を結んでいない取締役・執行役員・監査役や、国家公務員・地方公務員などに限られます。一般の会社員やパート・アルバイトが退職する場合は、辞表ではなく退職届(または退職願)を使うのが正しい書類です。「辞表を出す」という言い回しは広く使われていますが、実際に提出すべき書類は立場によって変わります。まずは自分がどちらに当てはまるかを確認してから、以下の書き方を参考にしてください。
辞表の書き方【例文つき】
辞表の基本構成は、表題・本文・日付・所属役職と氏名・宛名の5点です。以下は取締役が辞任するときに提出する例文です。
良い例文
辞表
私儀
このたび一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって取締役を辞任いたします。
令和〇年〇月〇日
取締役 山田太郎 印
株式会社〇〇 代表取締役〇〇〇〇殿
NG例
辞表
私儀、一身上の都合により、取締役を辞任させていただきたく存じます。
「させていただきたく存じます」は許可を求める表現で、辞表としては弱く曖昧です。辞表は一方的な意思表示のための書類なので「辞任いたします」と言い切る形にします。
総務・人事はここを見ている
- 表題が「辞表」で、提出者が委任・任命に基づく立場かどうか
- 辞任・退職の効力発生日が具体的な年月日で書かれているか
- 押印が実印・認印か(シャチハタは無効扱いにする会社が多い)
なぜ「辞表」で検索する人の多くは「退職届」が必要なのか
「辞表」という言葉は、ドラマや小説で上司の机に辞表を置くシーンなどを通じて広く浸透しています。しかし法律上、一般の会社員が退職する際に使う書類は退職届または退職願であり、辞表ではありません。検索時に言葉が混同されているケースが非常に多く見られます。
状況別チェックリスト
- 会社員・パート・アルバイトとして働いている → 退職届(または退職願)
- 取締役・執行役員・監査役として登記されている → 辞表
- 国家公務員・地方公務員として任命されている → 辞表(辞職願)
該当する書類を間違えると、社内での手続きがスムーズに進まないだけでなく、書類の性質(撤回できるかどうか)を誤解したまま提出してしまうリスクもあります。次の章で三者の違いを整理します。
辞表と退職願・退職届の違い
辞表・退職願・退職届は名称が似ているため混同されがちですが、対象者・法的根拠・撤回の可否がそれぞれ異なります。次の表で違いを確認してください。
| 項目 | 辞表 | 退職願 | 退職届 |
|---|---|---|---|
| 意味 | 役員・公務員などが辞任を表明する書類 | 退職を「お願い」する意思表示 | 退職日を「通知」する確定書類 |
| 対象者 | 取締役・執行役員・公務員など | 一般の会社員・パート・アルバイト | 一般の会社員・パート・アルバイト |
| 撤回 | 立場によって扱いが異なる | 会社が承諾する前なら可能な場合が多い | 提出後は原則不可 |
| 法的根拠 | 委任契約の解除・任命権者の承認 | 労働契約はまだ終了しない | 民法627条(提出から2週間で終了) |
【立場別】辞表・退職届の正しい書き方と例文
取締役・執行役員が辞表を出す場合
取締役と会社の関係は雇用契約ではなく委任契約です。そのため辞任の意思表示が会社に到達した時点で効力が生じ、会社側の承認は不要です(民法651条1項)。書面ではなく口頭でも法律上は有効ですが、後日のトラブルを避けるため、書面で日付と効力発生日を明記して提出するのが一般的です。
提出前に確認したいポイント
- 辞任によって取締役の員数が法定・定款の最低数を下回らないか
- 下回る場合は、後任が選任されるまで取締役の権利義務を持ち続ける点
- 辞任登記(法務局への届出)を会社側が期日までに行うか
公務員が辞表(辞職願)を出す場合
公務員の辞職は、取締役の辞任とは異なり任命権者(省庁・自治体の長など)の承認を得て初めて効力が発生します。承認前は職員としての身分が続くため、無断で出勤しなくなると懲戒処分の対象になる可能性があります。書類の名称も「辞職願」とする自治体・省庁が多いため、提出先の様式を事前に確認してください。
良い例文
辞職願
私儀
一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
令和〇年〇月〇日
〇〇部〇〇課 山田太郎
〇〇省〇〇局長 〇〇〇〇殿
NG例
辞職願を提出した翌日から、承認を待たずに出勤しなくなる。
公務員の辞職は承認があって初めて成立します。承認前に欠勤を続けると、職務専念義務違反として懲戒処分の対象になることがあるため、承認の連絡が来るまでは通常どおり勤務を続けてください。
一般社員が退職届を出す場合(誤って辞表と呼んでいたケース)
一般の会社員・パート・アルバイトが退職する場合、必要な書類は退職届または退職願です。退職届は退職日を通知する確定書類で提出後は原則撤回できず、退職願は会社が承諾する前であれば撤回できる余地があります。まだ上司に何も伝えていない段階なら、退職願から出すほうが安全です。
辞表を書くときに知っておきたい注意点
辞表は用紙・筆記具の指定がない書類ですが、提出先での慣例を踏まえておくとトラブルを避けられます。
- 手書き・パソコン:どちらでも法的には有効。氏名欄のみ手書きにして押印するのが一般的
- 押印:認印または実印を使用。シャチハタは無効扱いにする組織が多い
- 用紙:白無地の便箋が基本。罫線ありでも問題ない
- 封筒:白無地の封筒に「辞表」または「辞職願」と表書きし、二重封筒にする
辞表・退職届の提出タイミングと流れ
提出のタイミングは立場によって異なります。取締役は取締役会や株主総会での後任選任スケジュールを踏まえ、公務員は任命権者への事前相談を経てから提出するのが一般的です。一般社員の場合は次の流れで進めます。
- 就業規則の届出期間(1か月前等)を確認する
- 直属の上司に口頭で退職の意向を伝える
- 退職日・引き継ぎ内容について合意する
- 合意ができたら退職届(または辞表)を作成し、手渡しで提出する
提出後は、業務の引き継ぎと並行して次の準備を進めます。転職先が決まっている場合は転職用の履歴書テンプレートで応募書類を整えておくと安心です。まだ転職先が決まっていない場合は、ハローワーク用の職務経歴書テンプレートを使うと求職活動をスムーズに始められます。
応募書類の様式に迷う場合は、JIS規格に沿った履歴書テンプレートのような公的な様式を基準にすると迷いにくくなります。志望動機をまだ固めていない段階であれば、志望動機なしの履歴書テンプレートから必要な項目だけ埋めていく方法もあります。
まとめ
- 辞表を出せるのは取締役・執行役員・公務員など、雇用契約ではなく委任・任命に基づく立場の人
- 一般の会社員・パート・アルバイトが退職する場合は、退職届または退職願を提出する
- 取締役の辞任は会社の承認不要、公務員の辞職は任命権者の承認が必要という違いがある
- 辞表・退職届のどちらも、効力発生日を明記し「辞任・退職いたします」と言い切る形で書く
自分の立場に合った書類を選び、必要な承認・手続きの流れを押さえたうえで提出を進めてください。



辞表の書き方に関するよくある質問
- 辞表と退職届はどちらを提出すればいいですか?
-
一般の会社員は退職届(または退職願)を提出します。辞表は取締役や執行役員、公務員など、雇用契約ではなく委任契約や任命に基づく立場の人が使う書類です。
- 取締役が辞表を出す場合、会社の承認は必要ですか?
-
必要ありません。取締役と会社の関係は委任契約であり、辞任の意思表示が会社に到達した時点で効力が生じます(民法651条1項)。ただし取締役の員数が法定・定款の最低数を下回る場合は、後任が選任されるまで権利義務を持ち続けます。
- 公務員が辞表を出しても、すぐに退職できますか?
-
できません。公務員の辞職は任命権者の承認が必要で、承認されるまでは職員としての身分が続きます。承認前に無断で出勤しなくなると懲戒処分の対象になる可能性があるため、承認の連絡が来るまでは通常どおり勤務を続けてください。
- 辞表はパソコンで作成しても構いませんか?
-
多くの企業・官公庁でパソコン作成が認められていますが、氏名欄は本人確認の意味を込めて手書きにし、押印するのが一般的です。提出前に提出先の慣例を確認しておくと安心です。

