退職願の理由欄は、正直な事情を並べるよりも「一身上の都合により」とだけ書くほうが円満に進みます。詳しい事情まで書く必要はなく、むしろ書きすぎると引き止めや詮索の材料になり、やり取りが長引く原因になることもあります。正直に書くべきか迷っている方に向けて、状況別の例文と、上司に詳しく聞かれたときの伝え方まで解説します。
退職願の理由欄の書き方【結論】
結論:基本は「一身上の都合」で問題ない
自己都合で退職する場合、理由欄には具体的な事情を書かず「一身上の都合により退職いたしたく、お願い申し上げます」とまとめるのが正しい書き方です。転職・結婚・介護・体調不良など、退職の背景がどのようなものであっても、書面上はこの一文で通ります。
退職願は「会社にお願いする書類」であり、理由の詳細を審査するためのものではありません。理由欄を空欄のまま提出できる会社はほぼなく、必ず何かしらの文言を入れる必要がありますが、その中身まで具体的に問われることは基本的にないと考えて差し支えありません。
良い例文(自己都合の場合)
私事、このたび一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます
NG例
私事、このたび上司との人間関係がうまくいかず、また評価にも納得できないため、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします
不満や愚痴に読める理由を並べると、引き止めの交渉材料を与えてしまううえ、文末の「退職いたします」は退職届で使う断定表現のため、退職願では避けるべきです。
会社側はここを見ている
- 理由欄が退職願の書式として体裁を保っているか
- 「お願い申し上げます」という依頼の形で書かれているか
- 引き継ぎや後任の調整を進められる時期に出されているか
なぜ「一身上の都合」で十分なのか
法律上、理由の詳細を書く義務はない
民法上、退職の意思表示に理由は必要なく、期間の定めのない雇用契約であれば申し出から2週間で契約を終了できます。退職願の理由欄も同様で、「一身上の都合」という言葉自体が「個人的な事情のため」という意味を含んでいるため、それ以上の説明を書面に加える必要はありません。
詳しく書くと起きやすいトラブル
理由を具体的に書くと、かえって話がこじれるケースがあります。
- 「給与に不満がある」→ 待遇改善を提示され、引き止めの材料にされる
- 「人間関係が理由」→ 事実確認や配置転換の相談が始まり、退職の話が進まなくなる
- 「体調不良」→ 診断書の提出や休職の提案を受け、退職のタイミングが遅れる
円満に、かつ予定どおりのスケジュールで退職したい場合は、書面は「一身上の都合」に統一し、詳しい事情は口頭で聞かれたときに答えるという切り分けが現実的です。
状況別|退職願の理由の書き方
ほとんどのケースは「一身上の都合」で対応できますが、退職の背景によっては書き方や心構えが変わる場合があります。状況別に見ていきましょう。
転職・キャリアアップが理由の場合
転職先が決まっている場合も、理由欄には「一身上の都合」とだけ書きます。転職先の社名や業界名を退職願に記載する必要はありません。
良い例文(転職の場合)
私事、このたび一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます
結婚・介護・体調不良など家庭の事情の場合
結婚に伴う引っ越しや、家族の介護、自身の体調不良も「一身上の都合」に含まれる事情です。書面にプライベートな詳細を書く必要はなく、必要であれば上司との面談で状況を説明すれば十分です。
会社都合(倒産・解雇・退職勧奨)の場合
会社の倒産や解雇、退職勧奨を受けての退職は、自己都合とは扱いが異なります。この場合は理由欄に「会社都合により」など事実関係が伝わる表現を具体的に書く必要があります。「一身上の都合」でまとめてしまうと、後述する失業保険の給付日数で不利になることがあるため注意してください。
良い例文(会社都合の場合)
私事、このたび貴社事業所閉鎖に伴う人員整理のため、令和〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、お願い申し上げます
契約満了の場合
契約社員やパートで、契約期間の満了に伴い更新をせず退職する場合は「契約期間満了」であることを理由欄に明記します。「一身上の都合」と書いてしまうと自己都合退職とみなされ、失業保険の給付条件が変わることがあるため区別が必要です。
パワハラ・人間関係が理由の場合
パワハラや人間関係が本当の理由であっても、書面にそのまま書く必要はありません。事実関係の確認や配置転換の相談が始まり、退職の手続きそのものが止まってしまうことがあるためです。書面は「一身上の都合」でまとめ、記録として残しておきたい事実(日時・内容・関係者)は別途メモや録音などで確保しておくと、後で状況が変わった場合にも対応しやすくなります。
退職理由を聞かれたときの伝え方|書面と口頭は分けて考える
退職願を提出したあと、上司から「詳しい理由を聞かせてほしい」と言われることは珍しくありません。ここで重要なのは、書面の「一身上の都合」と、口頭で話す理由を一致させる義務はないという点です。
本音の理由がネガティブなものであっても、そのまま伝えると話が長引きやすくなります。円満に進めている人の多くは、事前に前向きな言い換えを用意しています。
| 本音の理由 | 伝えるときの言い換え例 |
|---|---|
| 給与・評価への不満 | 「別の環境で自分の力を試したいと考えました」 |
| 人間関係のストレス | 「これまでとは違う環境で挑戦したいと感じました」 |
| 将来性への不安 | 「長期的なキャリアを見据えて次の道を選びました」 |
| 体力的・精神的な限界 | 「働き方を見直すタイミングだと感じました」 |
会社側はここを見ている
- 感情的な不満をぶつけていないか
- 引き継ぎに協力する姿勢があるか
- 会社への不満を周囲に広めていないか
退職理由によって変わること|失業保険と転職活動への影響
失業保険の給付開始時期が変わる
自己都合退職と会社都合退職では、失業保険(基本手当)の給付開始時期が異なります。2025年4月の制度改正により、自己都合退職の給付制限は2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。
| 退職区分 | 給付制限 | 給付開始の目安 |
|---|---|---|
| 自己都合退職 | あり(原則1ヶ月) | 申請から約1ヶ月半後 |
| 会社都合退職 | なし | 申請から約1ヶ月後 |
パワハラや退職勧奨など、実質的に会社都合といえる事情がある場合は、退職願の理由欄を「一身上の都合」でまとめていても、ハローワークでの離職理由の判定は別途審査されるため、思い当たる事情があればハローワークの窓口で相談してみてください。
転職活動では聞かれ方が変わる
転職活動の面接では「退職理由」ではなく「転職理由」として問われることが一般的です。退職願に書いた「一身上の都合」とは別に、応募先に向けた前向きな志望動機を用意しておく必要があります。履歴書の職歴欄には退職理由を書く欄がないため、面接での受け答えを中心に準備しておくと安心です。
まとめ
- 退職願の理由欄は原則「一身上の都合」で十分
- 会社都合・契約満了の場合は事実関係を具体的に書く
- 本音の理由と口頭で伝える理由は一致させなくてよい
理由欄の書き方に正解がひとつしかないわけではありません。状況に応じて書面と口頭を使い分け、円満な退職につなげてください。
退職後の転職活動に向けて
退職願が受理されたら、次の職場探しの準備を並行して進めておくと、退職後の空白期間を短くできます。
転職先が決まっている場合は転職用の履歴書テンプレートが使えます。
次の応募先が決まっていない段階では志望動機なしの履歴書テンプレートで先に骨組みだけ作っておく方法もあります。
提出先の書式に迷ったときは厚生労働省の規格に沿った履歴書テンプレートを選べば安心です。



- 退職願の理由は正直に書いたほうがいいですか?
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書面には「一身上の都合」とまとめる形で問題ありません。人間関係や待遇への不満など本音の理由をそのまま書くと、引き止めの交渉材料になったり話が長引いたりすることがあります。詳しい事情は、上司から聞かれた際に前向きな言葉で伝えれば十分です。
- 「特になし」と理由欄に書いてもいいですか?
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「特になし」は退職の意思そのものが伝わりにくく、書類として不自然な印象を与えます。理由が思い浮かばない場合でも「一身上の都合により」という定型文を使えば、それだけで十分な理由として成立します。
- 会社都合なのに「一身上の都合」と書いてしまったらどうなりますか?
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退職願の記載だけで離職理由が確定するわけではありません。実際の離職理由は離職票やハローワークでの聴取をもとに判定されるため、会社都合に該当する事情があれば、退職願とは別に会社やハローワークへ相談してください。
- 契約満了の場合も「一身上の都合」と書いていいですか?
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契約更新をせずに満了退職する場合は「契約期間満了」であることを理由欄に明記してください。「一身上の都合」と書くと自己都合退職と誤解され、失業保険の給付条件に影響することがあります。

