従業員の履歴書の保管期間「5年」は、入社日ではなく退職日(または死亡日)から数え始めます。条文の原則は5年ですが、経過措置により当面は3年での保管が認められています。不採用者の履歴書には法律上の保管期間がありません。起算日の数え方と期限の計算例、立場別の保管期間、応募者が返却や破棄を頼む方法までまとめました。
履歴書の保管期間5年はいつから?起算日は「退職日」
結論:在職中は保管し続け、退職した日から数え始める
採用した従業員の履歴書は、労働基準法109条の「雇入れに関する書類」として扱われるのが一般的です。労働基準法施行規則56条は、この書類の保存期間の起算日を「労働者の退職又は死亡の日」と定めています。
つまり、入社から何年たっていても在職中は保管が続きます。カウントが始まるのは退職した日です。勤続10年の社員が辞めた場合も、10年分を差し引くことはできず、退職日からあらためて5年(当面は3年)を数えます。
履歴書の保管期間の答え
- 起算日:退職日(死亡による退職の場合は死亡日)
- 期間:条文上は5年。経過措置により「当分の間」は3年
- 在職中:期間のカウントは始まらないため、ずっと保管する
- 不採用者:法律で定められた保管期間はない
起算日の数え方と廃棄できる時期の計算例
退職日を基準に、3年と5年それぞれの保管期限を並べると次のとおりです。社内で廃棄のルールを決めるときの目安にしてください。
| 入社日 | 退職日(起算日) | 3年で管理する場合 | 5年で管理する場合 |
|---|---|---|---|
| 2015年4月1日 | 2026年3月31日 | 2029年3月末頃まで | 2031年3月末頃まで |
| 2023年10月1日 | 2026年9月30日 | 2029年9月末頃まで | 2031年9月末頃まで |
| 2026年4月1日 | 在職中 | 退職するまで保管 | 退職するまで保管 |
※期限は目安です。日数の細かな数え方に迷う場合は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
良い管理の例
従業員ごとのファイルの表紙に「退職日:2026年3月31日/廃棄可能日:2031年3月31日以降」と書いておく。退職手続きの日に廃棄可能日まで書き込んでおけば、何年たっても判断に迷いません。
NG例
「入社から5年たったので、在職中の社員の履歴書を整理して処分した」
起算日は入社日ではなく退職日です。在職中の社員の履歴書を捨てると、保存義務を果たせていない状態になります。
採用担当者はここを見ている
- 履歴書・雇用契約書・労働条件通知書など入社時の書類は、同じ起算日(退職日)でまとめて管理すると廃棄漏れが起きにくい
- 賃金台帳の起算日は「最後の記入をした日」で、履歴書とは違う。書類ごとに起算日が異なることを担当者間で共有しておく
- 退職者の情報は、退職証明書の発行や年金・雇用保険の問い合わせで後から必要になることがある
履歴書の保管期間は法律で何年?労働基準法の5年と経過措置の3年
「3年と書いてある記事と5年と書いてある記事があって、どちらが正しいのかわからない」という声は少なくありません。結論はどちらも誤りではなく、条文は5年、経過措置で当面は3年という二段構えになっています。
労働基準法109条が定める対象書類と起算日
労働基準法109条は「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない」と定めています。2020年4月の改正で、それまでの3年から5年に延びました。起算日は施行規則56条で書類ごとに決まっています。
| 書類 | 起算日(施行規則56条) |
|---|---|
| 労働者名簿 | 労働者の死亡、退職または解雇の日 |
| 賃金台帳 | 最後の記入をした日 |
| 雇入れ・退職に関する書類(履歴書など) | 労働者の退職または死亡の日 |
| 災害補償に関する書類 | 災害補償を終わった日 |
| 賃金その他労働関係に関する重要な書類 | その完結の日 |
出典:労働基準法109条、労働基準法施行規則56条(e-Gov法令検索)
「5年」と「3年」はどちらに合わせればいい?
労働基準法の附則143条には「第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中『五年間』とあるのは、『三年間』とする」という経過措置があります。2026年10月時点でもこの規定は残っており、3年で廃棄しても直ちに違反にはなりません。
ただし、経過措置がいつ終わるかは決まっていません。終了が決まった時点で書類がすでに捨てられていると、取り戻せません。迷ったときは次の基準で判断してください。
| 管理方法 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| 5年で管理 | 保管スペースやシステムに余裕がある会社 | 経過措置が終わってもルールを変えずに済む |
| 3年で管理 | 紙の保管場所が限られている会社 | 経過措置の終了が決まったら、社内規程をすぐ見直す必要がある |
未払い賃金を請求できる期間(賃金請求権の時効)も、同じ改正で原則5年・当分の間3年になりました。5年で運用しておけば、退職者との賃金トラブルが起きたときにも入社時の記録を示せます。
履歴書を保管しなかった場合の罰則
109条に違反した場合は、労働基準法120条により30万円以下の罰金の対象になります。労働基準監督署の調査で書類の提出を求められて出せない場合は、是正を求められることがあります。
採用担当者はここを見ている
- ネット上には改正前の「3年間保存しなければならない」という条文を引用したままの解説が残っている。古い情報をもとに社内規程を作っていないか確認する
- 正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も労働基準法上の「労働者」なので、履歴書の保管ルールは同じ
不採用者・応募者の履歴書の保管期間
不採用者の履歴書に法律上の保管期間はない
労働基準法109条が保存を求めているのは、雇い入れた「労働者」の書類です。採用に至らなかった応募者の履歴書は対象外で、何年保管しなさいという法律上の決まりはありません。
実務では、選考後3〜6か月程度で廃棄する企業が多いとされます。不採用通知への問い合わせや、返却の依頼に対応できる期間を見込んだ長さです。応募者の情報は長く持つほど、漏えいしたときの影響も大きくなります。
個人情報保護法と職業安定法で決まっていること
保管期間の決まりはなくても、履歴書は氏名・住所・顔写真・経歴がそろった個人情報です。企業には次のルールが関わります。
| 法律 | 内容 |
|---|---|
| 個人情報保護法22条 | 利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく消去するよう努める(努力義務) |
| 個人情報保護法23条 | 漏えい・滅失・毀損を防ぐための安全管理措置をとる |
| 職業安定法5条の5 | 労働者の募集を行う者は、求職者の個人情報を業務の目的の範囲内で収集・保管・使用する |
選考が終われば履歴書を使う目的はなくなります。不採用が決まった応募者の履歴書は、返却するか、社内で決めた期間がきたら確実に廃棄するのが基本です。
不採用者の履歴書を返却・廃棄する方法
- 返却する:不採用通知に同封して郵送する。送付状を添えると事務的な印象がやわらぐ
- 紙を廃棄する:シュレッダーにかけるか、機密文書の溶解処理サービスを使う。ゴミ箱にそのまま捨てない
- データを削除する:メール添付のPDF、採用管理システム、共有フォルダに残ったコピーまで消す
- 募集要項で伝える:「応募書類は返却しません。選考後〇か月で責任をもって廃棄します」と事前に明記しておく
NG例
「別の求人で使えるかもしれないので、不採用者の履歴書を本人に断らず保管し続け、他部署の担当者にも回した」
応募時に示した目的の範囲を超える使い方です。別の求人で再検討したい場合は、本人の同意を得てください。
採用担当者はここを見ている
- 履歴書を返してくれる会社、廃棄の方法を説明してくれる会社は、応募者の目に「個人情報を大切に扱う会社」と映る。不採用でも会社の印象は残る
- 廃棄の時期は「選考終了日から〇か月」と起算日まで決めておくと、担当者が替わっても運用がぶれない

【立場別】採用者・退職者・従業員の履歴書の保管期間一覧
同じ履歴書でも、提出した人の立場によって保管のルールが変わります。会社の担当者も応募者も、まずは自分がどこに当てはまるかを確認してください。
| 立場 | 法律上の保管期間 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 不採用になった応募者 | 定めなし(3〜6か月程度で廃棄する企業が多い) | 社内ルールによる | 個人情報保護法・職業安定法 |
| 採用された在職中の従業員 | 退職するまで保管 | まだ始まらない | 労働基準法109条 |
| 退職した従業員 | 5年(当分の間3年) | 退職日 | 労働基準法109条・施行規則56条 |
| 在職中に亡くなった従業員 | 5年(当分の間3年) | 死亡日 | 労働基準法109条・施行規則56条 |
| パート・アルバイト・契約社員 | 正社員と同じ | 退職日 | 労働基準法109条 |
アルバイトの応募でアルバイト用の履歴書を出した場合も、採用されれば正社員と同じように退職日から数えて保管されます。
採用担当者はここを見ている
- 同じ人が一度退職して再入社した場合は、前回の在籍分と今回の在籍分で起算日が分かれる。ファイルを分けて管理する
- 保管期間中の退職者から「履歴書を返してほしい」と頼まれても、会社には保存義務があるため原本の返却に応じられないことがある。期間が過ぎたら廃棄する旨を伝えると納得されやすい
応募者が自分の履歴書の返却・破棄を頼む方法
「顔写真から住所、経歴まで書いた紙が、不採用になった会社に残り続けるのは落ち着かない」。応募する側からすると、ここが一番気になるところです。返却や破棄は、応募者から依頼して構いません。
返却・破棄を依頼するタイミング
- 応募前:募集要項の「応募書類の取り扱い」を確認する。返却の有無や廃棄時期が書かれていることが多い
- 不採用の連絡を受けた後:早めにメールで依頼する。社内の廃棄期限を過ぎると、すでに処分済みのこともある
- 選考を辞退したとき:辞退の連絡と同じメールの中で、応募書類の破棄をお願いする
応募書類の破棄を依頼するメールの例文
依頼の目的は、相手に手間をかけさせずに確実に処分してもらうことです。不採用への不満を混ぜず、短く丁寧に伝えます。
良い例文
件名:応募書類のお取り扱いについてのお願い(氏名)
株式会社〇〇 人事部 採用ご担当者様
先日は選考の結果をご連絡いただき、ありがとうございました。
お忙しいところ恐縮ですが、提出いたしました履歴書・職務経歴書につきまして、破棄していただけますでしょうか。ご返送いただける場合は、着払いにてお送りいただければ幸いです。
このたびは貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
NG例
「不採用なので個人情報を返してください。法律で決まっているはずです」
不採用者の履歴書の返却は法律で義務づけられているわけではありません。強い言い方は相手を構えさせ、対応が遅れる原因になります。

個人情報の利用停止・消去を求められるケース
企業が応募者の情報を採用管理システムなどのデータベースで管理している場合、その情報は個人情報保護法上の「保有個人データ」にあたることがあります。同法35条5項では、企業が利用する必要がなくなった保有個人データについて、本人が利用停止や消去を請求できるとされています。
まずは上の例文のようなお願いの形で連絡し、対応してもらえない場合に、企業の個人情報の問い合わせ窓口へ相談する流れが現実的です。
採用担当者はここを見ている
- 破棄の依頼は珍しいものではなく、丁寧な依頼で印象が悪くなることはない。将来同じ会社に応募し直す可能性も考え、礼儀を保った文面にする
- 履歴書が手元に返ってきた場合、同じものを別の会社へ使い回すのは避ける。日付や志望動機が前の応募先のままになりやすい

次の応募に備えて控えを手元に残しておく
提出した履歴書が戻ってこなくても困らないよう、送る前にデータかコピーで控えを残しておくと、面接前の見直しや次の応募にそのまま使えます。転職で応募する場合は職歴欄を広くとった転職用の履歴書をデータで作っておくと、応募先ごとに書き直す手間が減ります。
どの様式を選ぶか迷ったら、厚生労働省の様式例に沿った履歴書を基本にすると、性別欄が任意記載になっているなど応募者の負担に配慮した形で作れます。
パートの応募ならパート向けの履歴書が、勤務時間の希望を書きやすい形になっています。
次の応募書類はスマホで作り直せる【サクレキ】
不採用の連絡を受けて手が止まっているなら、次の応募先に出す履歴書を今のうちに用意しておくと、気持ちを切り替えやすくなります。サクレキならスマホで入力するだけで履歴書が完成し、データで控えも残せます。
まとめ
- 起算日は退職日:従業員の履歴書は入社日ではなく、退職日(または死亡日)から数え始める
- 期間は5年、当面は3年:労働基準法109条の原則は5年。附則143条の経過措置で当分の間は3年
- 迷ったら5年で管理:経過措置の終了時期は未定のため、5年で運用しておくとルール変更に振り回されない
- 不採用者は定めなし:法定の保管期間はなく、3〜6か月程度で返却・廃棄する企業が多い
- 応募者は破棄を頼める:不採用後は丁寧なメールで返却・破棄を依頼する
保管期間を決めるときは、起算日と期間をセットで書類に記録しておくと、廃棄のしすぎも保管のしすぎも防げます。
履歴書の保管期間に関するよくある質問
- 履歴書の保管期間は5年と3年のどちらが正しいですか?
-
どちらも誤りではありません。労働基準法109条の条文は5年ですが、附則143条の経過措置により当分の間は3年とされています。経過措置の終了時期は決まっていないため、5年で管理しておくと後から規程を変えずに済みます。
- 履歴書の保管期間は入社日から数えるのですか?
-
入社日ではありません。労働基準法施行規則56条により、雇入れ・退職に関する書類の起算日は「労働者の退職又は死亡の日」です。在職中は期間のカウントが始まらないため、勤続年数にかかわらず保管を続けます。
- 不採用者の履歴書はすぐに捨ててもいいですか?
-
法律上の保管期間はないため、すぐに廃棄しても違反にはなりません。ただし、選考結果への問い合わせや返却の依頼に対応できるよう、3〜6か月程度保管してから廃棄する企業が多いとされます。廃棄するときはシュレッダーなどで復元できない状態にし、データのコピーも削除してください。
- アルバイトやパートの履歴書も保管義務がありますか?
-
あります。パート・アルバイト・契約社員も労働基準法上の労働者にあたるため、採用した場合は正社員と同じく退職日から5年(当分の間3年)の保管が必要です。不採用だった場合は、正社員の応募者と同じく法定の保管期間はありません。
- 退職した会社に「履歴書を返してほしい」と頼めますか?
-
頼むこと自体はできますが、退職後も保管期間中は会社に保存義務があるため、原本の返却には応じてもらえないことがあります。その場合は、保管期間が過ぎた後に確実に廃棄してもらえるかを確認しておいてください。

