履歴書で前前職を省いたり在籍期間を偽ったりすると、経歴詐称にあたり、発覚すれば懲戒解雇の理由になりえます。前前職は書類から直接わかりにくい面がある一方、面接での深掘りや職務経歴書との矛盾、業界のつながりから明らかになるケースがあります。この記事では、前前職の正しい書き方と記載例、嘘が罪になるケースや判例、短期離職でも不利になりにくい伝え方を採用担当者の目線で紹介します。
履歴書の前前職は省略も嘘もNG|正しい書き方と記載例
結論:前前職も含めてすべての職歴を書く
履歴書の職歴欄は、正社員・契約社員として働いた会社をすべて、入社順に書くのが原則です。前前職だけを抜く、前職の入社日を前倒しして前前職の期間を消す、といった書き方はどちらも「事実と違う経歴を申告した」ことになります。
「書かない」と「嘘を書く」は別物と考える方もいますが、採用の場面では区別されにくいのが実情です。書かなかった結果、応募先が誤った経歴を前提に採用を決めたなら、どちらも同じ経歴詐称として扱われる可能性があります。
- 書く:正社員・契約社員・派遣社員として働いた会社(期間の長短を問わない)
- 省略できることが多い:学生時代のアルバイト、職歴として扱わない短期の単発バイト
- 書き方を工夫する:数ヶ月で辞めた会社、試用期間中に辞めた会社(1行にまとめる方法あり)
前前職を含む職歴欄の記載例
前前職から前職、現在までを時系列でつなげて書きます。職歴欄が広い転職用の履歴書を使えば、社数が多くても1社ずつ入社・退職を書き分けられます。
良い書き方(前前職から順に記載)
令和2年 4月 株式会社〇〇商事 入社
令和3年 1月 一身上の都合により退職
令和3年 3月 株式会社△△物流 入社
令和8年 6月 一身上の都合により退職
以上
NG例(前前職を消して前職の入社日を前倒し)
令和2年 4月 株式会社△△物流 入社
令和8年 6月 一身上の都合により退職
実際の入社は令和3年3月なので、入社年月そのものが虚偽です。前職の会社に在籍確認が入れば、期間の食い違いがすぐにわかります。
短期で辞めた前前職の書き方
前前職を数ヶ月で辞めていると、職歴欄に書くのをためらいがちです。その場合は消すのではなく、入社と退職を1行にまとめて目立たせない書き方が使えます。
良い書き方(短期離職を1行にまとめる)
令和2年 4月 株式会社〇〇商事 入社(同年7月 一身上の都合により退職)
令和2年 9月 株式会社△△物流 入社
※退職理由は職務経歴書や面接で「何を学び、なぜ次を選んだか」とセットで説明する
採用担当者はここを見ている
- 短期離職そのものより「隠し方」:1社の短期離職は珍しくないが、隠していたとわかった時点で他の記載内容まで疑われる
- 学歴から現在までの時間の流れ:卒業年と最初の入社年の間に説明のない空白があると、面接で必ず質問される
- 職務経歴書との一致:履歴書の社数・期間と職務経歴書の内容がずれていないか
前前職の嘘がバレる6つの経路
前前職の嘘は、前職の嘘よりも書類から直接わかりにくいのが事実です。ただし、発覚の経路は書類だけではありません。代表的な6つの経路と、前前職の場合のバレやすさを整理しました。
| 経路 | 会社がわかること | 前前職の場合 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票(年末調整) | 入社した年に給与を払った会社名と金額 | 前前職を同じ年に辞めていれば判明する |
| 住民税の特別徴収 | 前年の所得額 | 前年の収入と申告した職歴が合わないと不審に思われる |
| 雇用保険の手続き | 資格取得日などの加入記録 | 主に前職の情報。前前職は見えにくい |
| 面接・職務経歴書 | 経験年数・業務内容の整合性 | 深掘り質問で矛盾が出やすい |
| リファレンスチェック・前職調査 | 在籍期間・役職・勤務態度 | 本人の同意を得て実施されるのが一般的 |
| 業界のつながり・SNS | 以前の職場を知る人からの情報 | 同業界への転職ほど発覚しやすい |
書類・手続きからわかること
年の途中で入社すると、年末調整のためにその年に勤めた会社の源泉徴収票を提出します。源泉徴収票には支払者として会社名が載るため、前前職をその年に辞めている場合は書類からそのまま判明します。
住民税を給与から天引き(特別徴収)する場合、市区町村から会社に前年の所得をもとにした税額が通知されます。申告した職歴に比べて前年の収入が明らかに多い・少ないと、人事担当者が違和感を持つきっかけになります。
面接・職務経歴書の矛盾
前前職を消すと、その期間を前職か空白期間で埋める必要が出てきます。面接官は「その期間はどんな業務を担当していましたか」「当時の上司は何人いましたか」と具体的に聞くため、実際に経験していない期間の話は回答が浅くなりやすく、ここで疑われるケースが多いです。
リファレンスチェックと業界のつながり
外資系企業や管理職の採用では、本人の同意を得たうえで前の職場の上司・同僚に経歴や働きぶりを確認するリファレンスチェックが行われることがあります。同業界への転職なら、取引先や元同僚を通じて前前職の話が伝わることも珍しくありません。
「前前職は書類でバレにくい」は本当。それでも書くべき理由
- いつ発覚するかわからない:入社して数年後に元同僚が中途入社してくる、取引先に前前職の知人がいる、といった形で発覚することもあり、発覚の時期は選べません
- 発覚したときに失うものが大きい:短期離職1社のマイナスより、「経歴を偽る人」という評価のほうがはるかに重い
- 嘘を守り続ける負担:雑談・社内の経歴紹介・昇進時の面談など、入社後も話を合わせ続ける必要がある
履歴書の嘘は罪になる?解雇されるケースと判例
嘘を書くだけでは原則として犯罪にならない
履歴書に事実と違う職歴を書いただけで、ただちに刑事罰を受けることは原則としてありません。履歴書は自分の名前で作る書類なので、内容が事実と違っても私文書偽造罪にはあたらないと考えられています。ただし、嘘によってお金を受け取ったり、証明書を偽造したりすると犯罪になりえます。
| 行為 | 問われうる罪 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 持っていない資格・経歴を偽って資格手当などを受け取る | 詐欺罪(刑法246条) | 10年以下の拘禁刑 |
| 卒業証明書・資格の合格証などを偽造・改ざんして提出する | 私文書偽造罪・同行使罪(刑法159条・161条) | 3月以上5年以下の拘禁刑(印章・署名がある場合) |
| 法令で定められた学位(学士など)を偽って名乗る | 軽犯罪法違反(1条15号) | 拘留または科料 |
| 職歴欄に事実と違う会社名・期間を書く、前前職を省く | 原則として犯罪にはならない | 刑罰はないが、懲戒解雇・内定取消の対象になりうる |
※2025年6月から懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化。個別の事案の判断は弁護士に確認してください
嘘が発覚すると解雇されるのか
刑事罰がなくても、会社の処分は別の問題です。多くの会社は就業規則で「重要な経歴を偽って採用された場合」を懲戒解雇の理由に定めています。裁判では、本当のことを知っていたら採用しなかったといえるほど重要な経歴かどうかが判断のポイントになります。
判例:炭研精工事件(最高裁 平成3年9月19日判決)
中卒・高卒者を対象とした募集に、大学を中退した人が最終学歴を高校卒業と書いて採用されました。最高裁は、労働者には最終学歴など企業秩序の維持に関わる事項について、真実を告知する義務があるとして、経歴詐称などを理由とする懲戒解雇を有効と判断しています。
この判例のポイントは、学歴を「高く」偽った事案ではなく、大学中退の事実を伏せて「低く」申告した事案だという点です。自分に不利かどうかに関係なく、事実と違う申告は処分の対象になりうることを示しています。
- 選考中・内定後に発覚:内定取消の理由になりうる
- 試用期間中に発覚:本採用の拒否(解雇)の理由になりうる
- 本採用後に発覚:就業規則に基づく懲戒処分(重大な場合は懲戒解雇)の対象になりうる

【ケース別】よくある履歴書の嘘と正直な書き方
前前職に限らず、履歴書で書き換えたくなりやすい項目は決まっています。ケースごとに、嘘をついた場合の発覚のしかたと、正直に書くときの書き方を並べます。
大卒と偽る(学歴の嘘)
大卒以上を応募条件にする会社では、内定後に卒業証明書や卒業証書のコピーの提出を求められることがあります。大学に問い合わせれば卒業の事実は確認できるため、学歴の嘘は最も発覚しやすい部類です。「学士」の学位を偽ったと評価されれば、軽犯罪法の対象にもなりえます。
良い書き方(大学中退の場合)
平成30年 4月 〇〇大学 経済学部 経済学科 入学
令和2年 3月 〇〇大学 経済学部 経済学科 中途退学(家庭の事情により)
NG例
令和4年 3月 〇〇大学 経済学部 経済学科 卒業
卒業証明書を出せないため、内定後の手続きで発覚します。中退の理由は面接で前向きに説明すれば足ります。
契約満了と偽る(退職理由の嘘)
自己都合で辞めたのに「契約期間満了により退職」と書くケースです。退職理由は、離職票や退職証明書に記載されている内容と食い違うと、面接や入社手続きで説明を求められます。自己都合なら「一身上の都合により退職」で十分で、理由を細かく書く必要はありません。
| 実際の退職理由 | 職歴欄の書き方 |
|---|---|
| 自分の意思で辞めた | 一身上の都合により退職 |
| 有期契約の期間が終わった | 契約期間満了により退職 |
| 派遣の契約期間が終わった | 派遣期間満了により退職 |
| 倒産・事業所閉鎖・人員整理 | 会社都合により退職 |
NG例
令和5年 3月 株式会社〇〇 契約期間満了により退職
実際は契約途中で自分から辞めている場合、退職理由の虚偽になります。契約期間の途中で辞めたなら「一身上の都合により退職」と書きます。
派遣で複数の派遣先を経験した方は、派遣向けの職務経歴書テンプレートで派遣先ごとの期間と業務を整理しておくと、履歴書の記載との食い違いを防げます。
嘘の職歴で期間や空白を埋める
空白期間を隠すために在籍期間を延ばす、知人の会社で働いていたことにする、といった嘘の職歴は、在籍確認や源泉徴収票の提出で崩れやすい嘘です。空白期間は職歴欄に無理に書き込まず、事実をそのまま書いたうえで、何をしていたかを面接で一言添えるほうが安全です。
良い書き方(空白期間がある場合)
令和5年 3月 一身上の都合により退職
令和6年 4月 株式会社△△ 入社
※空白の1年は面接で「資格取得の勉強をしていた」「家族の介護をしていた」など事実を簡潔に説明する。本人希望欄や職務経歴書に一文添えてもよい
前前職を解雇された事実を伏せる
業績悪化による人員整理など、本人に原因のない解雇であれば「会社都合により退職」と書くのが一般的です。一方、懲戒解雇は応募先が採用を判断するうえで重要な情報と考えられやすく、伏せたまま採用されると、後から重大な経歴詐称と判断されるおそれがあります。書き方に迷う場合は、転職エージェントなど第三者に相談してから提出してください。
採用担当者はここを見ている
- 学歴・退職理由・在籍期間は、入社手続きで提出される書類と突き合わせやすい項目
- 不利な経歴でも、理由と反省点を自分の言葉で説明できる人は「誠実さ」で評価が上がることがある
- 1つの嘘が見つかると、資格・年収・実績など他の申告内容もすべて確認し直すことになる

嘘を書いた履歴書をすでに出してしまったときの対処法
選考中・内定前に気づいた場合
選考中であれば、次の面接より前に、採用担当者へメールで訂正を伝えるのが最もダメージの少ない方法です。「記載に誤りがあった」と自分から申し出れば、後から発覚した場合と比べて受け止め方が大きく変わります。
訂正連絡のメール例
件名:提出書類の記載内容訂正のお願い(氏名)
株式会社〇〇 採用ご担当者様
先日提出いたしました履歴書の職歴欄に、記載漏れがございました。令和2年4月から令和3年1月まで株式会社〇〇商事に在籍しておりましたが、記載しておりませんでした。訂正した履歴書を添付いたします。ご確認の手間をおかけし、大変申し訳ございません。
入社後に打ち明けるか迷っている場合
すでに入社している場合も、自分から人事担当者に申し出るほうが、第三者経由で発覚するよりも処分が重くなりにくい傾向があります。申し出る前に、次の3点を整理しておくと話がこじれにくくなります。
- どの項目を、事実とどう違えて書いたか(会社名・期間・退職理由など)
- その経歴をもとに手当や待遇を受けていないか
- 就業規則の懲戒規定に経歴詐称がどう書かれているか
資格手当など金銭が絡んでいる場合や、処分の重さに不安がある場合は、申し出る前に弁護士や各都道府県の総合労働相談コーナーに相談してください。
前前職を正直に書いても書類で落ちにくくする3つのコツ
前前職を隠したくなるのは、「書いたら落とされる」と感じているからです。実際には、書き方と伝え方で印象はかなり変えられます。
- 職務経歴書で「得たもの」を書く:短期間でも担当した業務・身につけたスキルを1〜2行で示すと、「すぐ辞めた人」ではなく「経験を次に生かした人」として読まれる
- 退職理由を一本の筋でつなぐ:前前職→前職→応募先と、転職のたびに何を求めて移ったかを一貫したストーリーにする
- 職歴欄の広い履歴書を選ぶ:社数が多い方は、職歴欄が広い様式を選ぶと1社ずつ整理して書ける
様式は、学歴・職歴欄が標準的なJIS規格の履歴書テンプレートが使いやすいです。
性別欄の任意記載など現在の推奨項目に沿った様式を使いたい場合は、厚生労働省の様式に沿った履歴書テンプレートを選んでください。
採用担当者はここを見ている
- 短期離職が1社だけなら、それだけで書類選考を落とす理由にしない会社も多い
- 見ているのは「同じ理由でうちもすぐ辞めないか」。前前職の反省を踏まえた会社選びの基準を話せれば、懸念は小さくなる
前前職の書き方や退職理由の伝え方に迷って手が止まっているなら、職歴を入力するだけで履歴書の形に整えられるツールで、まず全社分を書き出してみてください。時系列で並べると、どこをどう説明すればよいかが見えてきます。

まとめ
- 前前職も省略せずに書く:省略や入社日の前倒しは経歴詐称と扱われる可能性がある
- 前前職は書類でバレにくいが、発覚の時期は選べない:源泉徴収票・面接・業界のつながりなど経路は複数ある
- 嘘を書くだけでは原則犯罪にならない:ただし手当の受給は詐欺罪、証明書の偽造は私文書偽造罪、学位の詐称は軽犯罪法違反になりうる
- 発覚すれば懲戒解雇もありうる:学歴を低く偽った事案でも最高裁は懲戒解雇を有効と判断している
- 短期離職は書き方で印象を変えられる:1行にまとめ、職務経歴書と面接で得たものを伝える
前前職を正直に書くことは、入社後も経歴の心配をせずに働くための条件です。書き方を整えてから応募しましょう。
履歴書の前前職・嘘に関するよくある質問
- 前前職がアルバイトだった場合も履歴書に書く必要がありますか?
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正社員の応募でアルバイト経験を職歴欄に書くかどうかは任意で、省略しても経歴詐称にはなりにくいです。ただし、その期間を正社員として働いていたように書くのはNGです。応募職種に関係するアルバイト経験なら、「株式会社〇〇 入社(アルバイト)」と雇用形態を添えて書くと評価の材料になります。
- 試用期間中に辞めた前前職も書くべきですか?
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試用期間も雇用契約を結んで働いた期間なので、職歴として書くのが原則です。数ヶ月であれば「入社(同年〇月 一身上の都合により退職)」と1行にまとめると目立ちにくくなります。社会保険に加入していた場合、手続きの記録から在籍がわかることもあります。
- 在籍期間を数ヶ月ずらして書くとバレますか?
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源泉徴収票の提出や在籍確認でずれが判明することがあります。数ヶ月の違いでも、意図的に変えたと判断されれば経歴詐称です。入社年月がうろ覚えの場合は、雇用保険の加入記録や年金の加入記録で正確な日付を確認してから書いてください。
- 履歴書の嘘は何年たっても問題になりますか?
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入社から年数がたっていても、就業規則の懲戒事由にあたれば処分の対象になりえます。ただし、処分が重すぎる場合や、会社が事実を知りながら長く放置していた場合は、処分が無効と判断される可能性もあります。個別の事情によるため、不安がある場合は弁護士や総合労働相談コーナーに相談してください。
- 職務経歴書で前前職を省くのも同じく問題ですか?
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職務経歴書は実績を伝えるための書類なので、応募職種に関係の薄い前前職は詳細を短くまとめても問題ありません。ただし、会社そのものを消して在籍期間を前職に含めるのは、履歴書と同じく経歴の虚偽になります。履歴書と職務経歴書の社数・期間は必ずそろえてください。

