うつ病で退職した場合も、履歴書の職歴欄は「一身上の都合により退職」と書けば足り、病名を書く必要はありません。悩みどころになるのは、療養による空白期間と「今は働ける状態か」をどう伝えるかです。ここでは、職歴欄・健康状態欄・本人希望欄の記載例に加え、面接での答え方と、病気を開示するかどうかの判断基準を採用担当者の視点から整理します。
うつ病で退職したときの履歴書の書き方【結論と記載例】
結論:職歴欄は「一身上の都合により退職」でよい
うつ病やストレスによる体調不良での退職は、多くの場合「自己都合退職」にあたります。自己都合退職の書き方は理由を問わず「一身上の都合により退職」が一般的で、うつ病だからといって特別な書き方が求められるわけではありません。
そもそも履歴書の職歴欄は、退職理由を詳しく説明する場所ではありません。病名や経緯は書かず、1行で収めるのが基本です。
職歴欄の記載例
良い書き方(職歴欄)
令和〇年 4月 株式会社〇〇 入社
営業部に配属 法人営業を担当
令和〇年 9月 株式会社〇〇 一身上の都合により退職
以上
NG例
令和〇年 9月 株式会社〇〇 上司のパワハラによりうつ病を発症し退職
病名と前職への不満を職歴欄に書くと、書類だけで「また同じ理由で辞めるかも」と判断されやすくなります。事情を説明したい場合でも、書類ではなく面接で、回復状況とセットで伝えるほうが誤解を生みません。
職歴の書き方そのものに迷う場合は、転職用の履歴書テンプレートの記入見本を見ながら埋めると、行の使い方や「以上」の位置まで確認できます。
療養期間が長い場合は「病気療養」と書くと空白の説明になる
退職後の療養が長く、職歴に半年以上の空白ができている場合は、あえて「病気療養のため退職」と書く選択肢もあります。空白期間は面接で理由を聞かれやすく、一般に3ヶ月を超えると気にする採用担当者が増える傾向があります。理由がひと言でも書いてあれば「何をしていたのか分からない」という不安は消えます。
このときも病名までは書かず、「現在は回復している」ことを添えるのがポイントです。
良い書き方(療養期間がある場合)
令和〇年 3月 株式会社〇〇 病気療養のため退職
(現在は回復し、業務に支障はありません)
| あなたの状況 | 職歴欄の書き方 | 補足 |
|---|---|---|
| 空白期間が3ヶ月未満 | 一身上の都合により退職 | 理由は面接で聞かれたら答える程度でよい |
| 空白期間が半年以上 | 病気療養のため退職 | 「現在は回復」を必ず添える |
| 休職を経て在職中に転職活動 | 現在に至る(在職中) | 休職の記載は不要。退職予定日があれば併記 |
| 通院・服薬が続いている | 一身上の都合により退職 | 勤務への影響があるなら本人希望欄で伝える |

履歴書にうつ病を書く義務はある?書く・書かないの判断基準
「病気のことを書かないのは、隠しているようで後ろめたい」と手が止まる方は少なくありません。判断の材料になる事実を整理します。
病名を書く義務はない
厚生労働省が公表している「履歴書様式例」には、健康状態欄も退職理由欄も設けられていません。厚生労働省は、本人の適性と能力を基準にした「公正な採用選考」を企業に求めており、仕事に関係のない情報を集めないよう呼びかけています。
過去にうつ病で治療していたことを自分から書かなくても、それだけで経歴詐称になるわけではありません。厚労省の様式に沿って作るなら、厚生労働省の規格に沿った履歴書テンプレートを使うと、健康状態欄で悩む必要自体がなくなります。
面接で聞かれたときに事実と違うことを答えるのはNG
書く義務がないことと、聞かれて嘘をついてよいことは別の話です。面接で「現在、業務に影響する持病や通院はありますか」と聞かれた場合は、事実に沿って答えてください。
- 病名まで答える必要はない:「体調を崩して療養していましたが、現在は回復しています」で十分に伝わる
- 「通院していない」と偽るのは避ける:入社後に通院で休む必要が出たとき、信頼を失う原因になる
- 経歴詐称が問題になるのは重要な事項を偽った場合:労務の専門家の間では、業務遂行に直接関わらない過去の病歴は解雇理由になりにくいという見方が一般的
伝えたほうが働きやすくなるケース
書かないことが常に正解とは限りません。入社後も配慮が必要なら、選考の段階で伝えておくほうが、ミスマッチによる再発のリスクを下げられます。
| 状況 | おすすめの対応 |
|---|---|
| 完治・寛解し、通院もない | 書かない。面接で聞かれたら「回復している」と答える |
| 月1回程度の通院が続いている | 本人希望欄に通院日だけを書く(病名は不要) |
| 残業や夜勤を控えるよう主治医から言われている | 本人希望欄か面接で勤務条件として伝える |
| 職場の理解がないと働き続けるのが難しい | 障害を開示して働く「オープン就労」も検討する |
採用担当者はここを見ている
- 病名よりも「入社後に、どんな勤務条件なら安定して働けるか」を知りたい
- 入社後に「聞いていなかった」と分かることが、採用側にとって一番困る
- 配慮してほしい点を具体的に伝えてくれる応募者は、自分の状態を把握できていると評価されやすい
ストレス・体調不良で退職した場合の健康状態欄と本人希望欄の書き方
市販の履歴書には健康状態欄があるものもあります。ストレスによる体調不良で退職した場合も、うつ病と同じ考え方で書けます。
健康状態欄の記載例
現在、業務に支障がないなら「良好」と書いて問題ありません。過去の病歴を書き足す必要はありません。
良い書き方(健康状態欄)
【回復しており通院もない場合】
良好
【通院は続いているが勤務に影響がない場合】
良好(月に1回通院していますが、業務に支障はありません)
NG例(健康状態欄)
うつ病のため通院中。ストレスに弱く、体調に波があります。
できないことだけが並び、「何なら働けるのか」が読み取れません。伝えるなら、勤務への影響と対応策をセットで書いてください。
通院が続く場合の本人希望欄の例文
通院日が決まっている場合は、本人希望欄に「いつ・どのくらい休みが必要か」だけを書きます。理由は「通院のため」で十分です。
良い書き方(本人希望欄)
貴社の規定に従います。
なお、通院のため月に1回、平日午後に半日休暇をいただけますと幸いです。業務の調整は事前に行います。
本人希望欄に条件を書きすぎると、ほかの記入欄より目立ってしまいます。希望は通院のような「どうしても必要なこと」に絞ってください。

採用担当者がうつ病で退職した応募者に確認したい3つのこと
応募者の多くは「うつ病だと知られたら落とされる」と身構えますが、採用担当者が気にしているのは病名ではありません。確認したいのは、次の3点です。
- 今、働ける状態か:主治医から就労の許可が出ているか、生活リズムが整っているか
- 同じ理由で辞めないか:体調を崩した原因を本人が把握し、応募先ではそれを避けられるか
- 不調のサインに気づいたとき、どう動くか:一人で抱え込まず、早めに相談・調整できるか
逆に言えば、この3点に答えられる応募者は、うつ病での退職歴があっても選考で不利になりにくい傾向があります。「病気を隠す工夫」より「再発しない工夫」を書類と面接で示すほうが、結果につながります。
自己PRで「今働ける」を伝える例文
自己PR欄で療養について触れる必要はありません。ただ、空白期間に取り組んだことがあれば、生活リズムや意欲が戻っている証拠として書けます。
良い例文(自己PR)
前職では法人営業として3年間、既存顧客40社を担当し、契約更新率95%を維持しました。退職後は体調を整えながら、業務効率化に役立てるためMOS(Excel)を取得しました。現在は毎日決まった時間に起床し、週5日の勤務に向けた準備ができています。顧客の課題を丁寧に聞き取る力を、貴社の営業サポート業務で活かしたいと考えています。
NG例(自己PR)
うつ病で退職しましたが、もう大丈夫です。前職は残業が多く無理をしてしまいましたが、御社なら頑張れると思います。
「もう大丈夫」の根拠がなく、前職との違いも書かれていません。何を経験して、何ができるのかが伝わらない内容です。
面接でうつ病の退職理由を聞かれたときの答え方
履歴書に「一身上の都合」と書いても、空白期間があれば面接で理由を聞かれることはあります。その場で言葉に詰まらないよう、答えを事前に組み立てておきます。
3ステップの答え方
- 事実を短く伝える:「体調を崩し、療養のために退職しました」。病名は聞かれない限り言わなくてよい
- 現在の状態と対策を伝える:主治医から就労の許可が出ていること、体調管理で続けていること
- 志望理由につなげる:療養中に見直した働き方と、応募先を選んだ理由を結びつける
回答例とNG例
良い回答例(面接)
前職では業務量が増えた時期に体調を崩し、療養に専念するため退職しました。現在は主治医から就労の許可を得ており、半年ほど前から通院も3ヶ月に1回に減っています。療養中に、仕事を一人で抱え込まず早めに相談することの大切さを実感しました。チームで業務を分担する体制を整えている貴社なら、長く力を発揮できると考え応募しました。
NG例(面接)
上司が厳しく、毎日のように怒鳴られていたため、うつ病になって辞めました。今の体調は日によって違います。
前職への不満で話が終わり、「今働けるか」に答えていません。事実だとしても、面接の場では回復状況と今後の働き方に話の重心を移してください。
採用担当者はここを見ている
- 回答の長さ。経緯を長く語るほど「まだ整理できていない」と受け取られやすい
- 「主治医の許可」「通院頻度」など、回復を客観的に示す言葉があるか
- 応募先の働き方を調べたうえで「ここなら続けられる」と言えているか
病気を開示して働く選択肢|オープン就労とクローズ就労の違い
体調にまだ波がある場合は、病気を開示して働く「オープン就労」も選択肢になります。障害者雇用促進法により、2016年4月から事業主には、障害のある人への差別の禁止と合理的配慮の提供が義務付けられています。この配慮の対象は、障害者手帳を持つ人に限られません。
| 比較項目 | オープン就労(開示する) | クローズ就労(開示しない) |
|---|---|---|
| 履歴書の書き方 | 本人希望欄などで必要な配慮を伝える | 一身上の都合により退職 |
| 働きやすさ | 通院や勤務時間の配慮を相談しやすい | 配慮は受けにくく、自分で調整する必要がある |
| 求人の選択肢 | 障害者雇用枠も含めて探せる(障害者雇用枠への応募には原則として手帳が必要) | 一般求人から幅広く選べる |
| 向いている人 | 通院・服薬が続いている、体調に波がある | 回復しており、特別な配慮がなくても働ける |
どちらが正しいということはありません。「配慮なしで週5日フルタイムを続けられるか」を基準に、主治医とも相談して決めてください。

体調に波がある時期でも履歴書はスマホで作れる
療養明けは、机に向かって手書きの履歴書を何枚も書き直すだけで疲れてしまうことがあります。スマホで作成すれば、体調のよい時間に少しずつ入力し、書き損じを気にせず修正できます。
志望動機を書く負担を減らしたい場合は、志望動機欄のない履歴書テンプレートを使う方法もあります。応募先から指定がなければ、JIS規格に沿った履歴書テンプレートのような一般的な様式を選んでも問題ありません。
まとめ
- 職歴欄は「一身上の都合により退職」でよい:病名や前職への不満は書かない
- 空白期間が長いなら「病気療養のため退職」:「現在は回復し、業務に支障はありません」を添える
- 病名を書く義務はない:厚生労働省の履歴書様式例に健康状態欄はない。ただし面接で聞かれたら事実に沿って答える
- 通院があるなら本人希望欄に頻度だけ書く:理由は「通院のため」で十分
- 採用担当者が見ているのは「今働けるか」「同じ理由で辞めないか」:回復の根拠と再発を防ぐ工夫を示す
うつ病での退職歴は、書き方と伝え方を整えれば、選考の場で弱みとして扱われにくくなります。体調のよい日に、まず職歴欄の1行から書き始めてください。
履歴書のうつ病・退職に関するよくある質問
- うつ病で退職したことを履歴書に書かないと経歴詐称になりますか?
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自分から書かなかったというだけで経歴詐称になることは、通常ありません。経歴詐称が問題になるのは、学歴・職歴・資格など業務に重要な事項を偽った場合と考えられています。ただし、面接で業務に影響する健康状態を聞かれたときに事実と違う回答をすると、入社後のトラブルにつながるおそれがあります。
- 適応障害やストレスによる体調不良で退職した場合も、書き方は同じですか?
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同じです。職歴欄は「一身上の都合により退職」、空白期間が長い場合は「病気療養のため退職(現在は回復し、業務に支障はありません)」と書けます。診断名の有無にかかわらず、病名は書かなくてかまいません。
- 休職していた期間は履歴書に書く必要がありますか?
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履歴書の職歴欄は入社と退職を記載するもので、休職期間を書く決まりはありません。在職中に休職し、その後退職した場合も「一身上の都合により退職」で問題ありません。面接で在籍期間中の働き方を聞かれたときは、事実に沿って答えてください。
- 前の会社に問い合わせられて、うつ病がばれることはありますか?
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健康に関する情報は個人情報保護法で「要配慮個人情報」とされ、本人の同意なく第三者に提供することは原則として認められていません。前職の会社が、本人の同意なく病歴を応募先に伝えることは通常考えにくいです。
- まだ通院中ですが、転職活動を始めてもいいですか?
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主治医から就労の許可が出ていれば、通院中でも転職活動は可能です。通院のために休みが必要な場合は、本人希望欄に「通院のため月に1回、平日午後に半日休暇を希望します」のように頻度だけを書いておくと、入社後の調整がスムーズになります。

